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□遅すぎる自覚(ss)
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アンタ何て死ねば良いのに。

そう言われてみたかった。


みんなに疎まれて、クラスメイト全員からイジメを受けてみたかった。

別にMなわけじゃなくて。
ただ、そんな事があれば、自殺する理由になるのに。そう思っただけ。


私はイジメを受けたこと何て、一度も無い。
でも、善意を受けたことも、無い。
私の存在は酷く希薄。
……人に疎まれない。いや、感心を持たれない。

気付かれない、目立たない。…だから、知られない。



好きだった男子に告白してみても、それは同じだった。
読書の片手間に「良いよ」と、こちらも見ずに承諾された。

否定してくれれば良いのに。
そう思ってた。




そして、
私は自殺した。


結局理由は手に入らなかった。

だから、遺書には
『ごめんね。もう嫌なの』
それだけ書いた。


思わせぶりな書き方をすれば、誰か私を見るだろうか?


学校で追悼式があって、設けられた台に心ばかりの花が置かれた。

こんなもんか。
そう思って見ていると、彼が来た。
私が告白した彼。

彼は手に持っていた白い花束を台に乗せて、呟いた。


「…好きだった。……今も好きだよ、愛してる」


初めて、聞いたコトバ。
一度も、誰にも言われなかった囁き。

そして、やっと知ったんだ。



私は、無関心の否定が怖かった。
ね、私を見て

存在する意味が欲しかった。
私を必要だと言って


愛を与えて、欲しかった。
「今も好きだよ、愛してる」



それでも、もう全て手遅れで。

想いのカケラも届かない。




遅すぎる自覚
(私も好きだよ、愛してる)




end.

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