凩の吹く刻
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この世界は悪人だらけだ。
この世界はゴミだらけだ。
一人残らず殺してやる。
一つ残らず片してやる。
少年は引き金を弾いた。
銃口から弾が飛び出し、目の前の男を貫く。
今のいままで命乞いしていた男は、その場に崩れ動かなくなった。
罪悪感はなかった。
コイツは悪人だ。
いまさら命乞いなんて、虫が良すぎる。ヘドが出る。
そんな思いの方が、彼は強かった。
脳裏によぎる、忌まわしい過去。少年は奥歯を噛み締めた。
「悪人なんて殺してやる。……全部、僕が、殺してやる」
恨みの篭った言葉をぼそぼそ吐き出す。
彼はそのまま帰路についた。
頭の中で、溶けたチョコレートを掻き交ぜるように言葉が巡った。
――この世界は悪人だらけだ。
この世界はゴミだらけだ。
一人残らず殺してやる。
一つ残らず片してやる。
僕がみんな、殺してやる。
殺して殺して殺して殺して、
そうして僕は、その先で――
空を見上げる。
厚い雲に遮られ、月は見えない。
少年はアァ、と嘆息した。
「父さん、母さん……」
重たい足を動かしながら、彼は夜の闇へと消えていった。