凩の吹く刻

□02
1ページ/5ページ




朝の澄んだ空気の中、旋風は自分の村へと続く一本道を歩いていた。
といっても、道の両側は村人が作った畑になっているため、すでに集落の中と言えなくもない。

しかし、その住人達は、総じて居住区に入ってからを『村』と呼んでいた。
村の畑というのは、草木を切りこちらに来る者を見えやすくするために作られた物に過ぎなかったからだ。

村の入り口、古ぼけた木製の看板に、消えかかった文字で『凩』と書かれている。

その横を通って、旋風は中に入って行った。




『凩』は小さな山村だった。
人口は少なく、村事態が一つの家のようになっている。
その中で互いに顔を知らない者などなく、外の人間には閉鎖的。

だからこそ、世間からは近年過疎化の一途をたどっているよくある村の一つだと思われている。

その実体が、殺し屋稼業をする人間の本拠地だなどとは解るはずもない。
見張り用のやぐらも、昔ながらの火の見やぐらだと言ってしまえば、疑う者など誰もいなかった。

ただの古めかしい村その1だ。



 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ