BL/happiness

□当たり前への対価。
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「千尋、パス!」

「え、あっ…ああっ」

「たく〜。」



今日の体育はバスケ。

たまには出席順じゃなく自由なチームで試合がしたいという悠樹の一言で、それが現実になった。


体育教師はビビりだから、理事長の息子の無邪気な言葉を飲んでしまった。



「…トシ、千尋をフォローしてやってくれ。」

「おう!」



見学する光希以外でチームを組んで、俺はたまに出る球技の授業と同じようにゴール近くで待機する。

ハンデとして俺は策士にはならないことになってるけど、千尋がトロいせいでトシの作戦がダメになる一方で見ていられない。



「もしや俺が足引っ張ってんのかな…」



俺が入る事で動ける人間が一人減るわけだから、もしかしてアイツ以上に足引っ張ってるかもな…。
じゃあほんの少しだけ動いてみようかな…



「お」



要人がボールを俺にパスしてくるけど背が低い要人のパスは、敵が受け取るにはちょうどいいナイスパスになってしまう…



「…あーあ」


また2点入れられる。
ついに10点差。
俺が居るのにこんなに点数入れられるチームは初めてだ。



さて…。



「あれ、たか。前に出てきて大丈夫か?」

「大丈夫。死なねーから」



敵から当たり前にボールを奪って、トシにパスを回す。

みんなには当たり前だけど
俺にはちょっとムチャなスピードで走って、トシからパスを受けとってスリーポイントを当たり前に決める。



「…すげー」

「あと7点。」



つまり三回で勝てる。
前半何もしてなかったから、せめて挽回してやりたい。

でももう腰が、足が、疼き始めた。
面倒くさい。
楽しみたいのに。



「千尋」

「な、なに…」

「パスするから合図したらもう一度俺にパスをしろ。」

「…は、はい」

「…見とれなくていいからっ…!」

「はっ、はい…」



たく。
ぼけーっとしやがって。
照れるしっ…




「おしっ」


トシが敵からボールを奪って悠樹にパスをする

けどまた奪われてしまう。


「千尋はココにいろよ」

「は、はい…」



そう言ってボールを持ってる人とは違う人に歩いて近寄っていく。

鷹博…、カッコいいな…
見とれるななんてムチャだよ…


「千尋!」

「え、あ」

「…早くパス回せ!」

「はいっ…」



名前を呼ばれて
気付いたらボールが近くに飛んできたから受け取った。

そして言われた通りにもう一度鷹博にパスを回した。
そしてボールを受け取った鷹博は
また同じ場所で同じようにシュートを決めた。



「さすが鷹博くんだね〜!」



ああ、本当に…カッコいい

僕もあんな風に出来たら良かったのに


でも…



「…大丈夫?」

「…、多分。」

「…無理しないで」

「はは。死にゃあしねーから」


それはつまり、無理してるって事なんだろうな…
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