BG/Happinees

□いわゆる、ただのやんちゃ。
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「赳!(たけし)早くパス回せよ!」

「…っ」

「あっ、どんくせえな!」




今日の体育はバスケ。

いつものように惜しげもなく鈍くささを披露してる僕は

いつものように鷹博に罵られる。





「ほら!タカ!」

「さんきゅ、トシ!」



鷹博が稔之(としゆき)から受け取ったボールをゴールに入れる。



「いえーい!!」

「やったね鷹博くん!」

「おう。」




要人(かなめ)と鷹博が要人的にはハイタッチのタッチをしている…。

…。



「…おい赳」

「は、はいっ…」

「パスくらいちゃんと回せよな」

「うう…」



結果がよかったからか、すれ違いざまに、にやりと笑う。

これで結果が伴ってなかったら…。










ピーーーー




「はい、そこまでーー」







体育館に先生の声が響いて、体育の授業の終わりを告げる。

赳は浅いため息をついて、体育教師の簡単な挨拶を聞きながら呼吸を整える。





「ありがとうございました」




クラス全員で教師に挨拶をして、体育館から解散する。



「今日は勝てたなー」

「うん…、僕は役にたってないけどね…」

「あはは、そんな事ないってーー」



悠樹(ゆうき)が慰めてくれる。

足引っ張ってばかりで、本当に申し訳ない…。




「役にたってない奴にそんな嘘言ってもダメだって、悠樹。な、赳?」

「うぐ…」

「精々俺の足引っ張らないように精進しろよ、赳クン♪」

「…ふん」

「た、たか、そんなキツイ事言ってやんなよー」

「いいよ、悠樹。…ほんとの、事だし…」




鷹博は運動神経がいい。

多分クラスで一番。
というか、僕が見てきた人で一番。


鷹博の足を引っ張ってるのは確かだけど
あんな風に人の気持ちも考えない事を言う鷹博にはあまり申し訳ないとは思わない。

だから痛い言葉を浴びせられても割と平気だったりする。

チクリとはするけど…。






「鷹博…素敵だったよ…」

「キモイ。」

「キモイとは失礼だな…うっとりしたよ…」

「だからキモイ。」




光弥(みつや)と話しながら、僕の前を歩く鷹博の後ろ姿を見る。

…言葉遣いがもう少し柔らかかったら、もっと格好良いのに…。

勿体無いな…。















「たく、見んなって言ってんだよ、テメーは。キモイな」

「ああ、鷹博っ…」

「筋肉ならトシの方が立派なモンついてるだろ、トシ見てろよ」

「稔之は、稔之は違うんだっ…ああっ、待ってくれ!」

「ついてくんな。」



体操服を脱いだ鷹博が僕の目の前にやってくる…



「…?」

「たく、変態には付き合いきれねえ」



どさりと僕の机に着替えを置いて、鷹博は素肌にカッターシャツを羽織る。



「いいじゃん…裸くらい見られても、減るもんじゃないし…ちょっとどけてよ、取れないよ」

「生憎俺は見せたい奴にしか見せない主義なんだよ、あっ、てめ、落としやがったな…」

「もう…上に乗せるからだろ…」

「だから、落とすなっての。考えろよな、バランス感覚悪いのは運動のみにしろよ」

「…ここで着替えなければいいじゃんか…」

「…。」



ボタンも締めずに、何度も落ちたズボンを先に履き替えてる…。

初めからそうしてくれたらよかったのに…。



「…邪魔って事か?ああ?」

「…っ、そ、そんな風には言ってないだろ…」

「寄ってくんなって事か?ああ?」

「だ、だから、そんな事言ってない…」



機嫌が悪くなっていく…。

ちょっと変な言い方しすぎたかな…。

喧嘩になりそうで、怖い、というか、申し訳ない、というか…ハラハラする…。




「…、光弥が嫌なら…ここで、着替えれば…いいよ…」

「…ふーん?じゃあ毎回ここにくるから。」

「ま、毎回…」

「今度から自分の荷物は椅子に置いてくれよ、赳クン」

「なんで自分の席なのに僕が遠慮しなきゃいけないんだよっ!」

「ハハハッ」





さっきまでの不機嫌な顔から一変、楽しそうに笑っている。

…鷹博は、やんちゃな子供だ…。
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