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□早く
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最近、臨也がおかしい。




「臨也!待ちやがれ!ぶっ殺してやる!」

「あのさぁ、殺すって言われて待つ人がいると思う?いるわけないだろ、もうちょっとその頭使ったほうがいいんじゃないの?…あぁ何も入ってないから使いたくても使えないのか!じゃあ、その使えない頭のかわりに俺が提案してあげるよ!君の馬鹿力、もっと他の事に有効活用したら?そしたらきっと、」

「うっぜぇぇぇえええ!!!死ね!!ノミ蟲ぃぃぃいいいいい!!!!」


俺達はいつも通り学校で殺しあっていた。もちろん今日は平日で授業もばっちりあるのだが、そんなことは俺達には全く関係のないことだ。臨也はまた俺のとこに不良やらヤンキーやらを送り込んでくるし、俺は俺でそんな 臨也を殺してやろうと、追い掛けまわしている。至っていつも通りだ。だが一つだけ普段と確実に違うところがあった。それは、


「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!」

「人の話しも聞いていられないなんて、相当だね!静雄!」



臨也がシズちゃんではなく、静雄と呼ぶようになっていたことだった。



***



「臨也がおかしい?」



新羅は首を傾げながら俺が言った言葉を再度繰り返した。今は学校でいう昼休みにあたる時間だ。俺は新羅と門田と一緒に屋上で昼飯を食いながら、前から気になっていたことを2人に話した。俺一人では解決出来ないと思ったからだ。なんせあの臨也だ、なにを考えているかなんて空気を掴むくらい難しいだろう。その点、新羅は中学が一緒だったし、門田は臨也に懐かれてる。ムカつくが2人のほうが臨也を理解してるだろう。あ?…なんで俺ムカついてんだ?


「あいつがおかしいのはいつもだろ」

「あ、それ言えてる!」

「手前も人のこと言えねぇだろうが。いや、そういうことじゃねぇよ」

「静雄もさらっと酷いこと言うよね。で、何がそうじゃないの?」

「あいつが俺のことを静雄って呼びやがるんだよ」

「…」

「…」


突然、2人とも黙り込んでしまった。まぁ無理ないよな。臨也は今まで俺のことを嫌がらせのように、シズちゃん、シズちゃんと呼んでいてそのたんびに俺は頭に血が上り額に血管を浮き上がらせていた。何度もそのふざけた呼び名をやめろと言っても決して変えなかったのだ。驚くのも仕方ないだろう。と、思っていた矢先。


「…あぁ、それ知ってる」

と、おもむろに新羅が呟いた。どこかで俺達が喧嘩しているのを見ていて臨也が言っていたのを聞いたのだろうか?にしては、どこか居心地が悪そうに苦笑いを浮かべたり少し目を逸らしたりしている。何か知ってんのか、臨也が静雄呼びする理由を。


「なんで、」

「臨也はね」

「おい、言うなって言われてただろ」

「僕は臨也に従う義理はないしそれに、見てらんないんだよ。門田くんもそう思わないかい?上手くいけばすごく平和になると思うんだ!」

「?」

「ったく…俺は知らないからなどんな事になっても」
「大丈夫だよ、そんな心配しなくても。結構楽に治まるべきところに治まっちゃうんじゃないかな」


新羅は楽しそうにしているが門田はどこか不安げに俺の前でわけのわからない話をしている。本当にわけがわからない。大丈夫って何が大丈夫と言うのだ。

ただ、臨也がこの2人に話したからこいつらは知っていたわけで、俺は知らなかった。つまり臨也は俺にだけ話さなかった。なんでだ?…いやあいつにとって強敵の俺に話したところで何もメリットはないのだろうが、チクリ、と痛くなった胸を不思議に思いながら新羅が臨也のことについて話すのを聞いていた。



***



新羅から臨也のことを聞いてから数日たった。その後臨也とは静雄と呼ぶようになったこと以外何も変わっていない。だけど、1つ気付いたことがあった。それは、あの日新羅から臨也の話を聞いてから俺はあいつを、かなりイラつくが意識するようになってしまい、いつも目で臨也を探していた。前ならノミ蟲臭ですぐ見つけだしていたが、なぜかどこにもいなかった。どうしていないのか、門田に聞いたらだいぶ前から俺は臨也から避けられていたらしい。学校には来ているみたいだから避けられているのは本当なのだと思った。マジか。全く気付かなかった。いや、でも昼飯の時いつも4人で食べていたのに最近は臨也がいないことには気付いてた。

会えば喧嘩は必然だった。顔を見ればどちらからともなく喧嘩をふっかけ校舎の中を走り回った。だが、それも俺が覚えている限りここ何週間もしていない。ってか、臨也の顔すら見てねぇ。


「…くそ」


なんでこんなイラついてんだよ俺。ノミ蟲を見なくて済んでるんだ、目が腐らなくていいじゃねぇか。と自分に言い聞かせながら、俺は臨也を探しているうちに屋上に来ていた。


「いない…よな」


はぁ、全くどこ行きやがったあのノミ蟲野郎。あいつの所為で俺がどんな気持ちでいるか知りもしないのだろう。

屋上はちょうどいい風がふいていて、気温も暑すぎず寒すぎずで昼寝をするのにはとてもうってつけだった。眠い。最近臨也を探すためにいつも気をはっていたから少し精神的に疲れた。ちょっとの間だけ休もうと思い、屋上で大の字になった。そして寝転んだ途端に眠気が襲ってきて、俺はそのまま眠っていた。



***



なんか…腕痛ぇ…

腕に圧迫感を覚え不意に目が覚めた。腕の圧迫感の正体を見ようと思い目を向けると。


「…臨也っ!?」


ピク、と臨也の肩が揺れた。まあ、俺が大きい声を出したからだろうけど、かなり至近距離にある臨也の顔を見たら誰だってびっくりして大声を出すだろう。しかもあろうことかこいつは俺の腕を枕にしながら、すぅすぅと寝息をたてながら呑気に寝てやがる。…ってか睫毛長ぇなこいつ。こんなバサバサしてて瞼重くないのかよ。などと思っていたら臨也がゆっくり目をあけた。

「…」

「…?」


なんだ?
臨也は目をパチパチさせながら俺の顔を凝視している。


「…………〜〜っ!!!シ、シズちゃん!!?」


臨也は音がしそうなほどボンッ、と顔を紅潮させたかと思うと俺からすぐに体を離した。ったく驚いてんのはこっちだ。気が付いたらこいつは俺を避けていて、また気が付いたらなによりも俺の近くで寝ていた。本当にこいつは何を考えているのかわからない。今も、え、なんで俺寝て、しかもシズちゃんの前で、すぐ行くつもりだったのに、もうやだ最悪、恥ずかし、うぅ、と意味のわからないことを呟いている。
でもそんなこいつをかわいいとか思っている自分が一番わからなかった。


「おい、臨」

「あ、あのさ!別にシズちゃんの隣で寝てたとか、全く意味なんかないから!ただの嫌がらせだから!えと…、シズちゃんに寝苦しさを追及させてあげようとしたの!どうだった!?寝苦しかったでしょ。っていうかシズちゃん体温高すぎだよ。本当子供みたいだよね!熱すぎて俺寝れなかったからもう1回寝ることにするよ?俺寝不足なの、だから邪魔しないでよ。じゃ、おやすみ!」


臨也はいつもより頭がまわっていないのか、変なことを叫びながら俺に背を向け再び眠ろうとしている。

耳が赤い…。

そう思いながら俺も臨也に背を向け隣で寝転んだ。俺と臨也の背中は僅か数センチ。少し動けばくっついてしまいそうだ。そんな中俺は緩む口をもとに戻すことができなかった。









変なとこで終りますがちょっと続きます。次回で新羅が何を言ったかわかる…と思います。まぁだいたいわかると思うけど笑
あ、初新羅&ドタチン登場ですね!いつものごとく口調がわかりません;;

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