Dream


□片想いに終止符を
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ほんの少し、そう、ほんの少し笑いかけてくれるだけで良かった。





「おはようございます、名前さん」


『あ…お、おはようございます、奥村先生…』




どもりながらもそう言えば、奥村先生はクスリと微笑んで廊下を歩いて行く。
その背中が見えなくなるまで、私は彼を見つめていた。





『やっぱり…好きだなぁ』




あの笑顔はみんなに見せるものであっても、私は幸せ。
だって、私だけに微笑んでくれれば、その瞬間は私だけのものだから。
たとえ叶う事のない恋でも、それでいいと思える。




『奥村、先生…』




…でも、時々怖くなる時がある。
もっともっとって、どんどん欲深くなっていく自分が居るから。




『…遠目で、見ていられるだけでいいの。それ以上は何も、望まないから…』




だから、ほんの少しだけ、私を見て欲しい。





『そう思っちゃうのは、ずるいかな…』


「何がです?」


『いや…奥村先生が……え?』




…え、私今一人しか居ないよね?なのに何で返事が返って…

はた、と声のした方を振り返れば、そこにはにこにこと笑みを溢す奥村先生が居た。




『…!お、おおお奥村先生!!』


「はい、奥村です」




ずさっと後退る私に一歩一歩と近づいてくる奥村先生。




『お、奥村先生…?』


「…どうかしましたか?」




いや、どうかしましたじゃなくて…

後退るのと近づいてくるのとが暫く続いた瞬間、トンと背中が壁に当たった。





『あ…』


「…捕まえた」


『…!』




顔を上げると私の目の前に先生の顔があって。
至近距離で見る先生に、顔が熱くなるのがわかった。




「…顔、真っ赤。で、さっきはなんて言ったの?」


『へ…』


「僕の事が好きって、聞こえたんだけど」


『なっ、なんでそれ……あ、』




…墓穴、掘ったかもしれない。
その証拠に奥村先生はクスクスと笑っている。




『う…』


「ごめんごめん。名前が可愛くて、つい」


『かっ、かわ…!?』




聞き慣れない言葉と、奥村先生の変わりように困惑していれば、クスリと笑う声が聞こえて。





「ずっと、名前が好きだった」




その言葉に顔を上げた瞬間、ほんのりと頬を染める先生と目が合った。







情熱的な、少年の瞳。



(…え、えええ!?)
(はは、驚きすぎだよ)
(だって、だって…!)
(うん、わかったから。黙らないとその口塞ぐよ?…僕の口で)
(…!(く、黒い…!)










敬語からタメ口に変わるのとか萌える。逆も然り。



2011/11/16

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