Dream


□嫌いになれない世界へ
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空に手を翳しながらはにかむお前が、何よりも好きだった。





「オイ名前ー?」




こくりこくりと揺らぐ頭をぱしんと叩けば飛び上がる身体。




『ぎっ、銀時?何だ…敵かと思ったじゃない』


「まー俺が敵だったら死んでるけどな」


『ふふっ、それもそうね』




へらりと笑って刀を持つ姿に胸を締め付けられたのは、一体いつからかわからない。




「…高杉が交代だとよ」


『ん、りょーかい』




ありがと、と砂で汚れた身体を払って曇天の空を見上げる。

寂しそうに、それでいて儚げに微笑む彼女が愛しくて。俺は咄嗟に名前の身体を抱き止めた。




『きゃ……ぎん、とき?』


「……お前女らしい声出せたんだな」


『…刺すぞてめー』




ドスの利いた声に苦笑しながら華奢な身体に手を回す。…縋るように、囲うように。




『…どうしたの?銀時らしくないね』


「…別にいいだろ。あいつらが居るといちゃつけねーし」


『まあねぇ』




くすくす、くすくすと笑い声が鼓膜に響く。
ぎゅうと背中に腕が回って『私もこうしたかった』と呟く声が聞こえた。





「…あー、やっぱ好きだわ」


『ん?』


「お前の事」




え、と溢れる言葉にふと笑いながら唇へと口づける。
驚いて顔を赤く染め上げる名前に、俺は少なからず幸せを感じた。




『…ばか。見られたらどうすんのよ』


「見せつけてやりゃあいいんじゃねーの?」




へらりと笑ってやれば、仕方ないと苦笑して柔らかい唇が頬に当たる。




『好きだよ、銀時』




悪戯っ子のような笑みを浮かべながら行こうと俺の腕を引く名前に、ずっとこんな時間が続けばいいと思った俺は…少しばかり女々しいのかもしれない。

それでも、こんな世界が好きだと感じていたんだ。


最後まで笑みを絶やさずに逝った彼女が、好きだった世界だから。





「…名前、」




あの頃とは見違える程に澄んだ空を、彼女は見れているのだろうか。
変わってしまった世界にただひとつ変わらない事は、今此処にお前が居ない事と、


俺のこの気持ちだけなのだろう。







今もう一度、愛していると囁きたい。











…甘→死ってアリなのかな…



2011/11/30

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