Dream


□愛おしくて、
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別に甘い言葉を囁いて欲しい訳じゃない。
ただ、もう少し…って思っちゃう私は、ワガママなのだろうか。





「悪い、仕事が入った」




まさかのドタキャンに軽やかな足取りは止まる。
耳に当てた伝令神機からは、阿近が何やら指示を出しているのが聞こえた。




「名前?」


『…ああ、うん、いいよ。ちょうど私も用事が入ったから電話しようと思ってたの』


「そうか。…悪ィな、埋め合わせはするから」




うん、と返事を返して途切れた電話。

待ち合わせの場所まで来ていた私はクルリと方向転換して隊舎へと足を戻す。





『…阿近のばかやろー』




そう悪口をぼやいてすん、と鼻を啜る。
と言っても、大体のデートは阿近の仕事でキャンセルばかりだからもう慣れた。…ただ、嫌われたくなくて子供じみた嘘を吐いてるだけ。





『…イイコでいなきゃ、だもんね』




本当はワガママだって言いたいし、欲を言えば今すぐに会いたい。でも職業柄、阿近には緊急の仕事が多いから仕方ないと言えばそう。




『…あーあ、いいや。修兵でも誘って呑みに行こ』




…愚痴ってやるんだから。

呆れ顔の修兵を頭に思い描きながら角を曲がると、瞬間に腕を引かれて壁に押しつけられた。

ヒラリと舞った白の服に、嫌でも目が行く。





『……え、』




トンと顔の横に手が置かれて息を弾ませるこの人に、きっと私の目は見開いている事だろう。




『…あ、こん』




何で、と呟く言葉はきっと阿近には聞こえていない。
ギラつかせる目に何故だか胸が跳ねたのは、淡い期待を抱いているから。




「…ったく、近くまで来てんなら言いやがれってんだ」


『……阿近こそ、今日はドタキャンしたんじゃないの?』




ハァ、とあからさまな溜め息に軽く苛ついた私は阿近の腕を払いのけながらそう言い放った。




「……」




急に無言になってムッと眉間に皺が寄ったかと思ったら、途端に腕を取られて阿近の広い胸に身体が行きつく。




『ちょ、阿近…』


「…電話の声が、泣きそうな声だった」


『え?』


「お前の事だから、また泣いてんじゃねぇかって思ったんだよ」




ぎゅうと抱き締められる身体に、耳元で感じる吐息。
嬉しく思ってしまう自分が此処に居て、自然と笑みが溢れた。




『阿近が仕事優先にするからだよ』


「…仕方ねぇだろうが。局長に逆らえるとでも思ってんのか?」




目盗んでくんのが精一杯だったんだぞ。と心底げっそりしたような声色が面白くて阿近の背中をきゅうと掴んでやる。




『…仕方ないなぁ。阿近の頑張りに免じて許してやるか!』


「…そりゃ嬉しいな」




けどな、檜佐木副隊長とは呑ませに行かせねぇぞ。

ちょっとだけ拗ねたようにそう言い放つ阿近がすごく愛おしいく思ったのは、私しか知らない彼の素顔が見れたからなのかもしれない。







あなたしか見えていないのだろう。



(…阿近嫉妬してる)
(…してねぇ)
(照れなくていーよ。可愛い可愛い)
(……犯すぞてめぇ)
(…嫌いになるよ)
(……冗談だ)
((…可愛すぎるんですけど))











阿近さんかわういー!←



2011/11/30

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