Dream


□最後の愛言葉
1ページ/1ページ


名前設定←企画からお越しの方は此方で名前を変換ください







血に染まった己の手を見て、思わず笑みが浮かぶ。それは自嘲か、はたまた何なのかわからない。




「名前、」




虫の息とはこの事だろうか。ひゅう、と喉に通る息だけが私の耳に届く。




「…人間は、脆いな」




胸を裂き、腹を貫かれ血が噴き出すそれを見下ろしてそう呟けば、名前が顔を歪めながらも笑った。




『…ごめ、んね、ごめん、メフィ…』




ポロポロ、ポロポロと瞳から溢れ出す涙が美しくて。




「…謝るな」




私の服を血まみれの手で掴む名前が、愛おしくて仕方がなかった。





「……愛していますよ、名前」


『……っ、』


「ずっと、愛しています」




まさか、この私が人間に弱みを見せてしまおうとは。

なんと滑稽で哀れか。




『…わた、し…も、あい、して…』




その言葉を遮るように、私は彼女の赤く染まった唇へ口づけた。

スゥ…と一筋の滴が頬を滑って、彼女の腕が小さな音を立てる。




「……名前、」




柔らかな唇からそれを離して、血に濡れた頬に指を滑らす。

薄く瞼を閉じた彼女は、まるで眠り姫のように美しかった。





「ククク…」




思わず浮かんだ笑みに咄嗟に手で顔を覆う。

腕の中に居る彼女は、もう動かない。
名を呼んでも、愛を囁いても、私が愛した笑顔を浮かべる事を知らない。





「まさかこの私が、人間を…」




愛したというのだ。

たった今、この腕の中で私の為に涙を流し事切れた女を…誰よりも、愛おしいと思った。




「ああ…なんて馬鹿馬鹿しいのか」




醜く哀れで、滑稽極まりない。

歪んでいるであろう己のそれから、彼女と同じモノが流れ落ちているのだから。
血のように赤く濁った、決して美しいとは言えない涙。それはまるで、私の心のようだ。




「…私もついに、人間にまで成り下がってしまったか」




いや、だが…彼女の元に行けるのなら、それでもいいかもしれない。

彼女の言葉をもう一度聞けるのなら、


今すぐにこの喉を、切り裂いてやろうか。







聞きたくなかったのは、最後だと思う事の出来ない人間染みたこの心。











青に落ちた日」様に提出

よくわからない文になってしまった…
切なくなっていればいいなと思う

素敵な企画に参加させて頂き、ありがとうございました!^^



2011/10/23
2011/11/10 加筆

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ