Dream


□願っても、願っても
1ページ/1ページ








これが恋だと気づいたのは、彼女が居なくなってからだった。




「名前…」




雨が身体を打ち付ける。凍える程に冷たいそれは、まるで俺のすべてを洗い流すように身体を濡らした。




「なぁ、名前…俺さ、お前の事が好きだったんだよ…」




粗末な墓に刻まれる名前が憎らしい。目の前にあるそれを殴りたい衝動に駆られる。
堪えるように握る拳からは、忌々しい血が滴っていた。




「……ごめんな。護るって言ったのに、」




俺は、護れなかった。
名前を殺した悪魔をなぶって、なぶって、ぐちゃぐちゃに殺しても…心は救われなくて。
原型も留めない程殺してしまうぐらいに憎んだ悪魔の血が自分に流れているんだと理解した途端、結局俺もこいつらと同じなんだと…自嘲的な笑みが浮かんだ。




「……ははは…っ」




曇天の空に渇いた声が響く。




「……ごめんな、名前。…ごめん、ごめん…ごめん…っ」




頼むから、お願いだから…帰って来てくれよ。
まだ…伝えてないんだ。好きだって、言ってないんだよ。




「ずっと、好きだったんだ…」




…こんな形で伝えたく、なかった。「好き」が「だった」に変わるなんて、俺は、嫌なのに。




「もう一度、笑ってくれよ…」







何度だって、俺を濡らすんだ。

君が思い出になるまで。











燐の死ネタが書きやすいのは何故だ…



2011/10/31

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ