Dream


□花開くそれは、まるで恋
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『明日、祭りがあるんやけど…一緒に行かれへん?』




昨日の夜勇気を出して送ったメールを見て、夢じゃないんだと実感する。
慣れない浴衣を着て、待ち合わせの場所で一人、幼なじみを待つ私。




「……名前?」



不意に聞き慣れた声が響いて顔を上げれば、目を丸くした柔造がそこに立っていた。




『お、おん。名前や』




やっぱり似合わなかったんか…とまとめ上げた髪に触れながらそう思っていれば、ポンと頭に置かれる手。




「なんや、えらい似合うとるな!一瞬誰かわからんかったわ。…ほんま、かいらしいよ」


『…!』




優しげに笑いながら頭を撫でる柔造に胸がドキンと跳ねた。




『あ、ありがと』


「おん。…にしても祭り来るん久しぶりやな。せや、なんか食べるか?好きなもん言ってみ」


『え?あ、いや、あては別に…ただ、花火が見たい思とるんよ』


「花火?」




コクリと頷けば、柔造は「そうか」と笑って私に手を差し出した。




『…?』


「はぐれるかもしれへんやろ?せやから手、繋ごか」


『え…』




カァ、と顔の熱くなる私にお構い無く柔造は手を取って、




「花火、楽しみやな」




と、私の大好きな笑みを溢した。

一歩先を行く背中を見つめていれば、まだ無邪気だった昔を思い出す。
あの時は男も女も関係なくて、いつも柔造や金造と遊んでいた。




(…もう、あの頃とは違うんやなぁ)




自分より何倍も大きくなった身体。時々見せる真剣な表情には何度だって見惚れた。




『……好き』




小さくそう呟けば、それと同じように柔造の足が止まる。
そこは小さな丘だった。




「花火見るんやったら此処て、昔見つけた穴場なんや。此処やったら人混みに紛れんし、二人きりでゆっくり見れる…お、始まった」




ドン、と打ち上がった花火は綺麗な明かりを照らして空に消えていく。




『きれい、やなぁ…』




少し周りを見渡せば、此処には私と柔造しか居なくて。二人きりという言葉が、収まった筈の鼓動を高鳴らせる。

ドンドンと夜空に打ち上げられる花に明るくなる視界。いまだに繋がれる手を、妙に意識した。





『…好きやで、柔造』




一際大きく鳴り響いた音に被せるように呟いた言葉。ソッと見上げれば、柔造には聞こえていないように空を見ていた。




(…これで、ええ)




所詮柔造にとって私は妹。年が離れた幼なじみなんて、つらいものしかない。
決してその人の妹以上にはなれないのだから。




「綺麗やな」


『…せやね、ほんまに…綺麗な花や』


「違うで」


『え?』




違うて…花火やないの?

首を傾げる私に、繋がれた手がぎゅっと握られた。




「綺麗なんはお前や」




ドン、明るくなった私の視界に、柔造が微笑んでいるのが見えた。




「こんなすぐに散ってまう花より、名前の方が何倍も綺麗でかいらしい」


『え、あ…』




ぐいっと繋がる手を引かれて、そのまま柔造の胸に収まる。
後ろから被さるように抱き締める柔造の腕が、いやに暖かかった。




『じゅ、ぞ…』


「…はは、ほんまは我慢しとったんやけどなぁ」




名前がかいらしすぎて、抑えが利かへんかったわ。

ボソリとした吐息が耳にかかる。それにビクリと肩を震わせた。




「…さっきの返事、してもええか?」


『さっ、き…?』




チラリと後ろを振り返ると、柔造は小さくはにかんで、




「好きやで、名前」




と私の頬へ唇を寄せた。

その瞬間、私の頬が花火の明るさに負けないぐらい赤くなったのは…言うまでもないだろう。







きっと私の記憶からは消えない。



(じゅ、柔造…!さっきの聞こえて…っ)
(はは、俺の地獄耳舐めたらあかんで?…にしても、顔真っ赤やなぁ)
(……っ(は、恥ずかし…!)
(…また来年も、その次の年も…一緒に祭り行こな)
(!う、うん…っ)











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2011/10/26

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