Dream
□君にぞっこん
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『ねー勝呂くん』
「何や?」
『私勝呂くんの事好きなんだー』
「おーほんまか。実は俺も……て、ハァ!?」
グルンと私の方へ振り返る勝呂くんの顔は面白い事になってる。
『あははっ、顔真っ赤!』
「や、やかましい!第一お前が変な事言うからやろ!」
『…好きって?』
「…!」
あ、また顔赤くなった。…可愛いなぁ。
「……名前、冗談言う暇あるんなら課題終わらしぃ」
『ひどいなー…誰も冗談なんか言ってないのに』
「な…っ!?」
勝呂くんは一際大きく目を見開いて、手に持っていたシャーペンがコロンと机に転がった。
『……あ、勝呂くんて詠唱騎士と竜騎士取るんだ。すごいねー』
「…お、おん。俺は寺の子やから暗記は得意…って何話変えとるんや!」
『えー?』
じろ、と私を睨み付ける勝呂くんにぶーぶーと唇を尖らせる。
「…名前、からかうんやったらええ加減にせえよ」
『……勝呂くんは、私がからかってるって…思うの?』
「は?」
転がったシャーペンを拾って文字を書こうとする勝呂くんの手をきゅっと握る。
「…!」
『わ、私、いつもばかみたいに笑ってるけど、嘘は…吐いた事、ないよ…?』
ドクドクと、心臓は今にも飛び出そうなくらいに高鳴ってる。握り締める勝呂くんの手は、私のより大きくて心地いい。
…その手が、好きで。
『…勝呂くんが好き』
「…!」
『おっきな手も、照れる顔も真剣な横顔も、全部…』
大好きなんだよ?
きっと赤くなってるであろう顔で涙目になりながら勝呂くんの顔を見上げる。そうすれば、いつの間にか手は離れて…その代わりに私の背中へと、大きな手が回された。
「……あんまそないな事言うなや。聞いとるこっちが恥ずかしいやろ」
『す、ぐろく…』
ぎゅう、と強く抱き締められて。
「…俺も、名前が好きや」
にこにこうざいぐらい笑う顔も、全部。
『う、うざいって、ひどい…』
「しゃあないやろ。お前は誰彼構わず笑顔振り撒いとるんや。…俺の気持ちも考えた事あるんか」
阿呆、とちょっとだけ弱々しく耳元でそう聞こえた。
『え…それって、』
嫉妬?
そう勝呂くんへ問い掛けた瞬間、身体がバッと離れて…耳まで赤く染め上げた勝呂くんが睨み付けるように私を見ていた。
「…っ、わ、悪いんか!?しゃあないやろ、ほんまはずっとお前が…好きやったんやから」
『!』
最後の方はボソボソと小さくなってしまったけど、ちゃんと聞こえた。
好き…って。
『…やっぱり、勝呂くんは可愛いね』
「な…!?か、かわええ訳ないやろ!気色の悪い!」
『あははっ、耳まで真っ赤!』
「……」
無言になった勝呂くんに笑いすぎたかな、と思ってゆっくりと顔を上げれば…勝呂くんはさっきとは違う柔らかい笑顔をしていた。
『…勝呂くん?』
「…ああ、やっぱり名前には笑顔が似合う思てな」
かわええよ。そうニッと歯を見せて笑う勝呂くんに、きゅんと胸が鳴る。
『…勝呂くんが、笑ってくれるから』
「ん?」
『勝呂くんの笑顔が見たいから、私は笑顔になれるんだよ?』
勝呂くんの広い胸に寄り添ってそう呟いてやれば、阿呆と照れたような声が聞こえてくる。
それにまた笑みを溢しながら、胸に顔を埋めて聞こえないように好きだと呟いた。
言葉じゃ足りないぐらいに。
((…この状況、どうしたらええんや))
(勝呂くん…好き)
(………俺もや(理性が…!)
煩悩坊\^^/
2011/08/17
2011/08/26 加筆