Dream


□ホントはずっと
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嫉妬してるって、わかってる。わかってるけど…時々何かで殴られたみたいに胸が痛くなる時がある。




「しえみ!」




私の視線の先には、燐としえみちゃんが。燐が何か言ったのかな、小さく笑い声が聞こえてくる。

それにチクンと胸が痛んだ。




『……痛い、な』




胸に手を当ててそうボソリと呟いてみる。




「何がや?」


『…へぇっ!?』




バッと顔を上げれば、勝呂くんが驚いた顔をして私の前に立っていた。




「おま…っ、びっくりするやろが!」


『え、あ、ごめん…!』


「…まあええわ」




勝呂くんはそう言うと、徐に私の隣へと座り出した。




『へ…勝呂くん?』


「……なんか、悩んでるんやろ?」




聞いたるから言ってみぃ、と勝呂くんは優しく微笑んだ。
…それにほんの少しだけ、安心出来た気がする。





『……あの、ね』




私って、嫌な女だなぁって…




「嫌な女?」


『……勝手に嫉妬して、勝手に落ち込んで。こんな気持ちになりたくないのに…』


「……」




…燐が好き。だけど、しえみちゃんも大切な友達だから。
嫌いになってしまいそうで嫌だ。そう考える自分が、嫌い。




『…ごめんね、勝呂くん。こんな事言っても意味ないのに』




ふと勝呂くんの方を向いた瞬間、頭に何かが置かれてそのままくしゃくしゃと撫でられた。




『へ、あ…』


「…無理して笑わんでええ」




そう言ってチラリと燐達の方を向く勝呂くんの眉間には深い皺が刻まれている。




「奥村と杜山さんの事やろ?」


『な、何で知っ……あ、』


「…口押さえんでも最初っから知っとった」




好きなんやろ?奥村が。




『…!』


「…まあ俺は何もせえへんけど。名前泣かせる真似しよったら奥村殴るだけや」




せやから、俺にあの阿呆を殴らせんでくれ。

くしゃりと笑顔を浮かべる勝呂くんに、一瞬涙が出そうになった。




『…っ、ありがとう、勝呂くん』


「気にすなや」




ポンポンと頭を撫でてくれる手が優しくて、私はソッと笑みを浮かべた。





「オイ!」




その瞬間、大きな声が聞こえて。勝呂くんの手が名残惜しく離れて行った。




『え…っ』




途端に後ろから身体を抱き締められて、勝呂くんの顔が驚きにも混じった表情になる。




「てめェ勝呂!なに名前泣かせてやがる!」




耳元で聞こえる声に、ビクリと肩が震えた。




「ハァ!?お前の目は節穴か!よお見てみい!俺は名前を慰めとっただけや!」


「……え、な、慰めてた?」




ふん、と勝呂くんがものすごい形相で燐を捲し立てる。




「名前…そうなのか?」




クルリ、身体を回されて至近距離に燐の顔。




『…う、ううううん!すすす勝呂くんは私の話を聞いてくれてただけなの!』


「それみぃ。お前の早とちりや、ボケェ」


「ぐっ……名前!ちょっと来い!」


『へぇえ!?』




グイッと腕を引かれて教室を飛び出る。不意に視界に入った勝呂くんが手を振って気がしたのは見間違いではない筈だ。

燐に手を引かれ着いたのは使われていない教室で。





「ああああの、よ…」




ガシガシと頭を掻く燐は私でもわかるぐらいに焦っている。




『…燐、どうしたの?』


「……わかんね」


『え?』




スッと目を細める燐は難しそうに顔を歪めていた。




『何かあったの?り…「ムカついた」…え?』


「……お前が勝呂に頭、触られてんの…ムカついた」




嫌だったんだよ。

歪められた顔が恥ずかしそうに赤く染まって、




「…俺、名前が好きだ」




燐の声が、私達しかいない教室に響いた。




『………う、そ…』


「嘘じゃねぇ!俺は、名前が好きなんだ…!」




何度も言わせんなよ…

耳まで真っ赤に染めた燐が小さく言葉を繋ぐ。




『だ、だって!燐はしえみちゃんと仲いい、し…』




…楽しそうに笑ってたから。

きゅう、と苦しくなる胸に無意識に手を握り締めていた。




「しえみ?別にしえみはそんなんじゃねぇよ。…俺はずっと、名前が好きだったんだ」


『…!』




トクン、一際大きく胸が跳ねた。屈託のない笑みを浮かべる燐に、愛しさが溢れ出す。




『…っ、…私、も』


「ん?」


『……私、も、燐が…好き』


「!」




言い切った瞬間に思わず瞳から涙が出た。それに気づいた燐が慌てているのがわかる。




『…私、しえみちゃんと燐が仲良くしてるのが、つらかった、の…だから、勝呂くんに』


「……え、じゃあしえみに嫉妬、してたのか…?」


『……』




燐の言葉に小さくコクンと頷いた。




「………やべぇ」


『…?』




ゆっくりと顔を上げたと同時に、燐が私を強く抱き締める。




『り、ん…?』


「…悪ィ、嬉しくてさ。名前が嫉妬してくれてんのが」


『……う、』




…恥ずかしい。
赤くなる顔を広い胸に埋めれば、可愛いな、なんて言葉が聞こえてくる。




『うー……り、ん』


「んー?」


『……嫉妬深くて、独占欲が強くても、いいの…?』




チラリと顔を見上げれば、きょとんと目を丸くさせる燐が居て。




「…バーカ。そんなの、」




おあいこだ。

そうはにかむ燐に、きっと私は彼を手放す事など出来ないと思った。







きっと…ずっと。



(うー…燐)
(何だ?)
(…すき)
(…!……俺も)


(あちゃー…坊、失恋決定ですねぇ。そないカッコつけるからですよ)
(…黙っとけ)
(志摩さん、坊弄るんやめたげてくださいよ。失恋したてなんですから)
(……グッ)
(…一番酷いん子猫さんですよ)











…これ勝呂夢じゃね?しかもエセ京都弁\^p^/



2011/08/15

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