月よ、星よと 眺むモノ 原作

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「相変わらずギャラリー多いのな。」
「ウチはOBも多いしな。」


一也と軽くランニングをしたあと、今日試合が行われるグラウンドへ足を向ける。
その周りには既に人でごった返していてすごい事になってる。


「ふは、変なプレッシャーになんなきゃいいけどな。」
「1年には厳しいんじゃねぇか。」


まぁどいつもこいつも中学じゃ名を馳せた奴ばかり…
そのプライド、経験が邪魔になるときもあること。
早めにわかることも重要だろうしな。


「んで大輝はどうする。」
「んーどうっすか…」


昨日の食堂での騒動から一夜明け、監督が宣言していたように今日は主力はオフ。
まぁ次勝てば関東大会だし、たまには休息も必要だってんでオフになったんだが…


「一也はやっぱ見てくんだろ?」
「あぁ…なんか面白そうだしっ。」
「俺は今回はパス。」
「そっか、」


こうもギャラリーが多いと、な。
あんましここにいたくねぇ。

昨日の1年といい沢村といい。
見ていきたいきもするが…


「そりゃ残念、また後でな。」
「おう。」


今来た道を引き返す。


多くのギャラリー。
もちろん、有難いことだ。
それだけ自分たちを応援してくれている人がいるんだから。


でも中には純粋に応援してくれるやつばかりではない。
それは、あの頃から痛い程わかっている。


「大輝。」
「うん?」
「ぼーし、ちゃんとかぶれよ。」


そう言って俺の被っているキャップを取り上げた。


「はぁ?おい、」
「ほい、んじゃ後でなー」


そのキャップはそのまま一也の頭へ。
その一也の頭にあったキャップが俺の頭へ目深に乗せられる。

ぽんぽん。

軽く頭を撫でたかと思えば、もう俺に背を向けて歩き出している。


「さんきゅ。」


その背中に小さくつぶやく。
届くなんて思ってなかった言は、聞こえたのか否か。
遠ざかる背をしばらく見送り、自分も室内練習所へ足を運ぶ。


「ちゅーっす。」
「御幸は一緒じゃねぇのか。」
「あぁ。一也なら試合見てる。」
「大輝は良かったのかよ、あいつなら一緒にって言ったんじゃねぇの?」


既に柔軟を始めていた洋一の隣に腰を下ろして同じく柔軟を始める。


「いや…」
「まぁ自分たちが試合するわけじゃねぇしな。見ててもあれか。」


それよりあいつは出してもらえんのか?
まぁ監督次第だなっ。


そう笑って立ち上がる。


「んじゃそろそろ始めっか。」
「おう。」


一也もだけど、洋一も。
人の事をよく見ている。
だから触れてほしくない、言いたくない事はすぐに察してくれる。


ほんと、なんつーか、助けられてるよ。


「んで?波乱はありそうか?」
「波乱?」


波乱…
起すとすれば…


「さぁ…どうだろうな?」



月よ、星よと 眺むモノ 12



2015/05/14 來華
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