月よ、星よと 眺むモノ 原作

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あの後守備の連係、カバーリングの確認をした後、明日の練習について監督から話があった。
といっても今回のメインは俺たちレギュラーではなく…


「1年チームと2,3年チームの対戦ねぇ。」
「レギュラーはオフだってよ。明日どうっすかなー守備練は今日やっちまって連携確認済だしなぁ。」


流石にオフで連携の確認って亮さん嫌がるよな、なんて言いながら頭を掻く洋一に笑みがこぼれる。

亮さんを尊敬してる洋一らしい。
日々亮さんとの連携の質を上げる事に何処までも貪欲だ。
そんな洋一相手だからこそ、亮さんも言うときは言うし、プレーを求めるんだろう。


ほんと、うちの二遊間は頼りになるよ。


「一也もオフなのかよ。」
「あぁ特になんも言われてねぇしな。」
「投手見に来いって言われたわけじゃねぇのか。」


ウチの投手事情を監督の次に請け負ってる一也の事だ。
てっきり監督に言われてそっちに行くもんだと思ったんだが…


「一緒で嬉しい?だいちゃん。」
「うぜぇ。」


そう言って軽く足をける。


「ひっでぇな。」
「ひゃは、もっとやってやれよ大輝。」
「倉持大輝を唆すな。」
「やーだね。」


じゃれ合いつつ食堂へ足を踏み込む。


「空気重くね?」
「大方明日の試合のせいだろ。」


いいから飯食おうぜ。
そう言って止めた足を動かした一也の後へ続く。


「おばちゃん、飯3人分頼むわ。」
「はいよー。」


受け取りカウンターでお盆を受け取り席を探す。


「おっ、沢村の隣空いてるぜ。」
「んじゃそこ行くか。」
「いいけど大輝は沢村の隣に座るなよ。」
「はぁ?なんでだよ。」
「ひゃはっまだ根に持ってんのかよ御幸のやつ。」


わけ分かんねぇ。
洋一は分かってるみてぇで笑ってるだけだしよ。


「なんだお前だいぶ食えるようになったじゃねーか。」


そんなこんなしてる内に一也は沢村にちょっかいをだし始めたし、別にほっといていいか。
そのまま一也の後ろを通り過ぎて1つ奥の席に足を向ける。


「こらこら、大輝は俺の隣だろうが。」
「大輝さん!?」
「よぉお疲れさん。」
「はーい、お前は大輝に話しかけんな。」
「はぁなんでだよ!!」


一也の隣に腰掛ければ、その反対隣に洋一が腰掛ける。
かと思えばいねぇ…
周りを見渡すとちゃっかりノリたちのテーブルに座る洋一がいた。


あの野郎…
ため息をついて大人しく一也の隣に腰を下ろす。


「つーかアンタじゃなくて大輝さんの隣がいいんですけど。」
「だめ。」


面倒くせぇ…
隣で騒ぐ2人を無視して飯を食べ始める。


「つーか静かだけど何かあったのか?」
「お前聞いてねぇの?」


明日1年のチームと2,3年で試合すんだぜ?
その言葉にまたも沢村が騒ぎだす。


「うっせ…ん?」
「ここ…隣いいですか?」
「大輝との間じゃなきゃいいぜ。」


物静かに近づいてきた1年は一也の言った通り沢村を押しのけて反対隣へ腰を掛けた。
また沢村が騒ぐ、ほんと飽きねぇのな。
いい加減鬱陶しく感じて席を変えようと立ち上がった瞬間。


「自分は明日ここに誰にも打たせる気はありません。そしたら僕の球、受けてもらえますか?」


その言葉に食堂の空気が固まった。
それも一瞬で周りの2,3年が殺気立ち、この1年を囲む。


ははは…こいつも沢村と同じか。


「みっともないマネするな!!俺たちはプレーで語るしかねーんだ。」


どいつもこいつも貪欲だねぇ。


「監督の目論見通り…」
「あぁ先輩たちの闘争心をうまく煽ったな。」


こんな輩ばっかりだ、足元掬われねぇようにしないとな。


「俺達も気を抜けねぇな。」
「ったりめぇだろ。」



月よ、星よと 眺むモノ 11



2015/4/25 來華
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