月よ、星よと 眺むモノ 原作

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春の都大会・準決勝。
相手は市大三高。


真中さんの調子はあんま良くねぇみてぇだな。
流石に選抜の疲れが残ってるのか…


まぁそこんとこ逃がさねぇのがウチの打線だよなぁ。


そして…


「相変わらず、いいとこで回ってくんのな。」
「まぁ、それ程でも?」
「褒めてねぇよ。ここまで繋いだ哲さんたちに感謝しろよ。」
「してるしてる。」


打順が一也へ回ったところで状況は満塁。
本当、こうゆう場面での打率の良さはチームトップなんじゃね?


「おい。」
「うん?」


バッティンググローブを調整しながらネクストを出ていく一也へ一言、


「決めてこいよ。」
「ふ…まかせとけって。」


にやりと笑ってそのままバッターボックスへ。


一也を見ていた視線はそのまま、相手バッテリーへ移す。


ここまで連打されてんだ、いい加減1アウト欲しいよな。
勝負強い一也との勝負を避けようにも塁は全部埋まってる。
押し出しで相手に点やるなんて、チームの士気が下がるような事できねぇよな。


カウント2-1
2つ続けて外…決め球は内角へ。
球種は真中さんの得意なスライダー、ってとこか。


おいおい。
俺にでさえ配球が簡単に読めるぜ?
それをウチの天才様が逃すかよ。


カッキーーーーン!!


真中さんが振りかぶって投げた球は、ピッチャーミットに届くことなく、スタンドへ。


「おぉおお!!いったぁぁああ!!」
「初回…いきなりの満塁ホームラン!!」
「こいつがあの御幸一也か!!」


「っは!!まじでやりやがったな。」


悠々と各塁を回りホームへ帰ってくる一也。
他の先輩たちとハイタッチを交わす様子を見ながら、俺もバッターボックスへ向かうために立ち上がる。


「青峰。」


そこへ片岡監督から声がかかる。


「うっす。」
「次のファーストストライク、迷わず叩けよ。」


その言葉に思わず笑みが浮かぶ。


「御幸にウイニングショットを打たれて動揺している今、まずは初球を丁寧に投げ込んでくるだろう。」


一気にたたみ込め。

その言葉にヘルメットの鍔を触る事で応える。


「大輝続けよ。」
「っす。」


哲さんに肩と背中を叩かれ送り出される。


「マグレだろ。次はそう上手くはいかんさ。」
「るせっ。マグレでホームランが打てるかよ!!」


洋一と騒ぎながらこちらへ戻ってくる一也。
すれ違いざま、目があう。
バットを持っていない左手を挙げると、同じように挙げられた一也の左手と重なる。


「ナイバッチ、ダーリン?」
「そりゃあハニーの期待には応えないとな。」
「っは言ってろ。」


そのままバッターボックスへ。
バッターボックスへ入る前に一礼を忘れない。
左手に持ち替えたバットを軽く3回回す。
バットに右手を添えて左足で土を踏み固めて視線は相手ピッチャーへ。


その右腕から放たれた低めいっぱいアウトコースへ放たれた球。
まだ初球、見送ってもいいんだが…


わりぃな。


ぐっと左足で踏みこんで、バットを振り抜く。


捉えた球は


「つーか…御幸一也が6番打ってる打線が怖えぇって言ってたけどよ、」


アーチを描き


「あの青峰大輝も下位打線にいるんだぜ!?」
「なんなんだよ、この2年コンビ!!」


スタンドへ消えていく。



月よ、星よと 眺むモノ 09



2015/4/18 來華
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