月よ、星よと 眺むモノ 原作

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「ん…」


深い所まで沈んでいた意識が引き上げられる。
カーテンの隙間から指す日差しの眩しさに目を覚ます。


「くぁっ。」


身体を起して伸びをすれば小気味いい音が間接から聞こえる。


「…行くか。」


練習着に着替え部屋を出る。
いつもより少しばかり早い起床だ。
自然と一緒になる一也も洋一も姿は見えない。


まぁ始終一緒で、今年一年はクラスでも一緒なんだ。
別に、声かけなくてもいーだろ。


朝の静けさがまだ残るグラウンド。


深く深呼吸すればまだ少し冷えた空地が肺を満たす。
朝日が眩しくて手で影をつくる。


「沢村…?」


その先をよく目を凝らしてみれば何かと騒がしく楽しませてくれるやつ。


「ふはっ!!」


おいおい…
まだ早朝、部員も集まってねぇ…
いったいいつから走ってんだよ。


少しずつ近づけば、その横顔がはっきりしてくる。


「っは…随分とまぁ…楽しそうに走んだな。」
「ぅおっ!!誰だよってか黒っ…」
「よぉ、噂のルーキー君。」
「っす。」
「おいおい同じ部の先輩だぜ?んな顔すんなよ。」


あんまり先輩に対していいイメージがないのか、警戒して伺うような目で見てくる。


「あんた御幸一也といつも一緒にいる奴だろ。」
「………あぁ。」


一也、お前こいつに何したんだよ…

あぁ…
入部初っ端でやられてたな…


「やはり!!とゆう事は!!スパイ!!」
「はぁ?」
「あいつに言われて!!このエースになる男の情報を集めてるんですね!!」


さすがエースになる男!!
チーム内でもケイカイされるとは!!


「ぶはっ!!おまっやっぱサイコ−だわ!!」
「はーはっは!!…は?」
「お前ならなれんじゃねーの、このチームのエースに。」
「っ!!」


自然と口角が上がる。


分かるだろ、普通。


都内はもちろん、全国から野球留学で部員が集まってる。
どいつもこいつも、元のチームでは4番でピッチャーなんてのがゴロゴロいやがる。
名のあるシニア・ボーイズからの出身者だって多い。

それだけの名門校だぜ、ここは。


けど、こいつの目は輝いてやがる。


超えなきゃなんねぇ壁がこれでもかってある。
遠投でカーブを投げるような奴だ、まともな投球は習ってねぇんだろ。
やらなきゃなんねぇ事は多い。


けど…


こーゆー諦めの悪い奴、嫌いじゃねぇ…!!


「俺は応援してるぜ?未来のエース様よぉ。」
「っ!!」
「だから、」


早く上がってこい。


「簡単に諦めんじゃねーぞ。」


そう言って頭を撫でてると、その目を輝かせて頷いた。


「〜っはいっ!!ガングロ先輩!!」
「ガングロじゃねぇ!!青峰大輝だ!!」
「はいっ、大輝さんっ。」



月よ、星よと 眺むモノ 06



2015/04/12 來華
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