月よ、星よと 眺むモノ 原作

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「分かってるなお前ら…」


その言葉で始まった試合前のミーティング。
監督を中心にレギュラー9人が円になり、その外に同じく1軍が座る。


片岡監督、相当いらついてんな。


まぁ、次の相手が市大三高ってのがあるからだろうが…


「うけた屈辱は10倍にして返すぞ!!」


嫌いじゃねぇよ、そういうの。


自然と口角が上がる。
やるなら、相手は強い方がいい。
超える壁は高い方がいい。


「ひゃはっ大輝すっげぇ悪人面っ。」
「あぁ?その言葉そのまま返してやるぜ。」
「ふん、気合は十分の様だな。」


普段、無駄口には小言を飛ばしてくる監督も、にやりと口角を上げる。

その様子に増々笑みが浮かぶ。
それは隣の一也も哲さんたちも同じようだ。


「よし!!いつものやついけ!!」


その言葉に哲さんを中心に円陣を組む。
円陣を組んだところで全員が左胸の「青道」の文字に手を当てる。


「俺たちは誰だ…?」

「「王者 青道!!」」


この瞬間、ぴんと張る空気、もたされる緊張感が精神状態を高める。


「戦う準備はできているか?」

「「おお!!」」

「わが校の誇りを胸に 狙うはただひとつ―」


ただの練習試合ですら、公式戦なら、なおさら


「全国制覇のみ!!」
「いくぞぉ!!」

「「おおおおおぉぉぉお!!」」


負けるわけにはいかねぇだろ。


「ははは、目ぎらぎらしてるぜ?」
「そりゃあ…な。」


そういう一也も俺同様、表情こそいつも通りだが、その目には確かに闘志が見える。


いいねぇ…
チーム全体が士気が高い。
やるならこうでなくっちゃな。


カバンを肩に掛けながら、バスに向かって歩きだす。


「やっぱりオーラが全然違うよ…」
「かっけー!!」


多くの1年が羨望の眼差しでこちらを見つめる、そんな中、こっちを一人違った視線で見てくる奴がいる。


「っは…ほんと気持ちだけは一丁前だな。」
「そうか?ただバカなだけだろー。」
「お前…」


この前から沢村を話題に出すと途端に不機嫌になるから面倒くせぇ…


「はぁ…」
「御幸も案外子供っぽいよね。」
「亮さん…」
「ほら待ってるみたいだから早く行きなよ。」


試合になったらちゃんと使えるようにしておいてよ?
そう言って肩を叩いてバスに乗り込む亮さん。
続いてバスに乗込めば不機嫌を隠すことなく、窓の外へ視線を向けている一也。


はぁ…
ほんと、めんどくせぇ。


どうっすかな。
亮さんにはあぁ言われたが…


ぐいっ


「!?」
「お前の席はこーこ、だろ?」
「おまっ…」
「会場着いたら起こしてくれよ、だいちゃんっ。」


どこに座ろうか迷っていたら一也に腕を引かれ、強制的に隣に座らされた。
急に引っ張った事に対して文句を言ってやろうと口を開いたが、俺の手を握ったまま満足げにしている様子を見ると何も言えなくなる。


「はぁ…好きにしろよ。」
「ははは、そーさせてもらうな。」


気分の浮き沈みがまじで面倒な奴。
けどまぁ


そんな一也に、本人が満足ならいいか、なんて。
そう思ってる俺自身が一番面倒なんだよな…



月よ、星よと 眺むモノ 08



2015/4/18 來華
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