Short Story
□誓いのキスより伝わるハグで
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「先輩、卒業、おめでとうございます」
『ありがと、日吉』
いつもは仏頂面の日吉も今日は何だか、表情が柔らかくて私も自然と頬が緩む。
それはきっと、今日が卒業式だから。
日吉がテニス部部長になり、元テニス部部長の跡部や同じレギュラーだった宍戸達、そして彼女である私は今日、氷帝学園中等部を卒業する。
まぁ、高等部に上がるだけだからさほど距離はないのだが。
けど、やっぱり寂しい。
それは、日吉も一緒だよね?
『・・・ねぇ、日吉』
桜が舞う。
この景色も、日吉と見るのは最後なんだ。
「なんですか?」
『───・・・抱き締めてよ』
君と離れるのは不安が募る一方で、凄く・・・怖い。
だから今は、強く強く
───・・・抱き締めて下さい。
ギュッと、背中まで回された腕、私も迷わずに日吉の背中に腕を回す。
離れられないように。
『中等部と高等部か・・・』
「会いに来ますよね?」
『・・・そこは普通、日吉が会いに来るんじゃないでしょうか』
「つまらないでしょう」
『この場で笑いを求めないで』
そうですね。と悪びれもなく笑う日吉。
ねぇ、日吉。
伝わりましたか。この想い。
「・・・好きですよ」
『私も、好き、だよ』
伝わってるよね。
ちゃんと。
君と離れるのは不安で、寂しいけど・・・
我慢できなかったら
またこうやって
──・・・抱きしめてもらうから。
待ってるよ、少し先で。
誓いのキスより伝わるハグで
(・・・そろそろ離れない?)
(離れたいですか?)
(・・・いいや)
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『サヨナラ、大好きな人』に提出しました。
ありがとうございました!
2008/01/24