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□泣きたい時は泣きなよ
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「今年の全国、開催地が東京都に決まった。
そして、開催地から一校、推薦枠として全国大会への切符が与えられる。そして今回、東京都が選んだ一校、それが・・・
――・・・我が氷帝学園だ」
誇りを打ち砕かれた。
だから俺たちは、積み上げてきたもの全部ブチ壊して、勝利を掴む。
失った自尊心を取り戻し、強くなるのだ。
―――――――・・・
監督からつい先ほど聞かされた、"推薦枠"という全国大会出場権。
俺たちの実力ではないが、全国大会に行けるという喜びは、隠せない。
また、もう一度、先輩方とテニスが出来る。
青学にカリを返せる。
嬉しくない訳がない。
その知らせはたちまち広がり、跡部さんのパフォーマンスと共に、俺たちは全国出場を決めた。
そのあと、すぐに跡部さんの家へと向かった(半分は拉致なのだが)
「適当に座ってろ」
「はぁ・・・」
何か用なのか。
ただ、たんに、全国大会への出場を、俺と喜ぼうとしているのか。
・・・なんとなく、
胸が痛む。
俺が、断ってしまった全国への道。
実力ではない。だが、過去の経歴をふまえての選択校だったのだろう。
その経歴を、テニス部を、築き上げたのは・・・
紛れもない、
跡部さんなのだ。
俺は、先輩たちの道を邪魔をしてしまった。
「日吉?」
「えっ・・・」
「何突っ立ってんだ、早く座れよ」
「あ・・・はい」
いつの間にか戻って来ていた跡部さんが、俺の顔を覗き込む。
呆然とした俺の態度を、跡部さんは不信に思ったのか眉間に少しシワがよる。