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□スペシャル☆Day
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「明日は・・・ちょっと用事があるねん」
思った以上に、低い声で言葉を発する。
用事なんかない。
ただ、今は2人っきりにはなりたくない。
格好悪い。
判っているのに・・・
「やから、堪忍な」
止まらへん。
「・・・そうですか」
いつもは表情を見ただけで、思いなど読みとれないくらい無表情なのに、今日は目に見えて判るくらい落胆の表情を浮かべている。
その表情が、胸をツキンと痛ませる。
日吉が放課後デートに誘ってくるのは、めずらしい、というか、初めてではないだろうか。
明日に・・・何かあっただろうか。
記憶にはない。
日吉の誕生日でも、俺の誕生日でも、付き合い始めた記念・・・というわけでもない。
だったら、なんだ?
「でしたら・・・明日、時間のある時に会っていただけませんか?」
「えっ・・・」
そこまでして、明日にこだわる理由がある。
真剣な日吉の瞳は、微かに不安に揺れている。
唇も少し震えている。
・・・俺はアホやろか。
「・・・ええよ」
「! 本当ですか」
「嘘ついてどうするん」
少し笑みを浮かべた日吉が愛しくて、頭をくしゃ、と撫でた。
「お昼休みでええ?」
「はい、ありがとうございます。忍足さん」
俺が見た昨日の光景は、少し薄れてきていた。