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□君に逢いに行く。
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別にもうそんな祝ってもらっても、喜ぶような歳じゃないし、平気だ。
だけど、そんな誕生日とか関係なく、ただ"逢いたい"という気持ちはある。
逢いたい、声が聞きたい、自分の眼に移したい、この手で・・・跡部さんに抱きつきたい。
・・・そんなこと、言えたことはないが。
「・・・逢いたい」
ポツリと、呟かれた言葉は誰にも聞こえることなく消えていく。
そんな時、携帯が鳴る。
この音楽を鳴らすのは、ただ一人。
愛しいあの人だけ。
「・・・はい」
ピッと、通話ボタンを押して耳にあてれば最初に聞こえたのはため息。
『良かった。寝てんのかと思ったぜ』
「・・・レポートを、書いていたので」
いつもは寝ている時間なのだが、レポートがありこんな夜中まで起きていたのだ。
最初に聞こえたため息は安堵のため息か、と判った俺はホッと、息をつく。
そんな俺には気づかずに、跡部さんの言葉を続ける。
『お前、今家か?』
「当たり前でしょう、夜中ですよ」
『まぁ、そうだな』
「・・・・・・・」
久しぶりの会話に懐かしさが込み上げる。