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□コーヒー・シュガー
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「アンタ、誰や?」
財前、とやらに話しかけられたから。
「・・・テニス部の者だ」
「いや、ちゃうやろ。名前や、名前」
「・・・日吉、だ」
「あー・・・次期部長さん、やっけ」
ニヤリ、と笑う。
なんなんだコイツは。
「俺も。次期部長候補なんや」
「それがどうした」
「来年、試合するかもしれへんな」
「・・・ああ、そうだな」
楽しみにしてるぞ。と続ければ財前は、互いにな。と短い返事をした。
無言になった俺達の間には冷たい風邪が吹き抜ける。
・・・鳳の奴、なにしてんだ?
「・・・寒い」
何回目だろうか、この言葉は。
「・・・日吉」
「なん・・・っ!?」
パシッ、と投げられたものをキャッチした。
ほんのり温かい。
「・・・缶、ココア?」
「まだ温かいやろ?」
財前が投げたものだとすぐに分かった。
「なんでこんなの持ってたんだ?」
「寒くなったら飲もう、おもてな。けど、日吉にやるわ。寒そうやし」
「・・・悪いな」
寒さに負けて、素直にココアを飲む。