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□紡ぐ言葉のミチシルベ
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信じてない。

信じ、きれないんだ。


いつも女生徒に囲まれて、不自由ないアナタが、俺を好きだなんて・・・




「日吉」




俺を呼ぶ声も、




「好きだ」




真っ直ぐ口にしてくれた言葉に、偽りはない。




「お前は・・・」




なのに俺は、

跡部さんから逃げた。










―――――――・・・




「・・・・・・・・・・」




あれから一週間。


何があるという訳でもなく、時間は過ぎた。

まるで、跡部さんに告白されたことが、嘘のように、何もなかった。


・・・嘘。

嘘だったら、どれだけ楽なんだろうか。


だけど跡部さんは、嘘でそんなことを言う人なんかじゃないし、からかってでも言わないだろう。



それが余計に、俺の心を締め付けるのだ。


俺は跡部さんを―――・・・




「・・・ょし、日吉!」


「あ・・・な、なんだ?」


「手止まってる」


「・・・あぁ、悪い」




部活が終わって、今部室にいるのは俺と鳳の二人だけになっていた。

日誌を書いていた手が、いつの間にか止まっていた所を鳳に指摘され、止まっていた手を動かす。



最近、ずっと跡部さんのことを考えている。


なんで、なんて。

思い浮かぶのは、あの日のことばかりで。




「じゃあ、日吉、俺先に帰るね。お疲れさま」


「あぁ、お疲れ」




目を向ければ既に部室の扉を開けた鳳が、ヒラヒラと手を振っていた。

それを、言葉だけで返す。




「あ、日誌ね、跡部部長が"生徒会室に持って来い"だって。忘れないでね」




その言葉に驚き、顔を上げた時にはもう、鳳の姿はなかった。






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