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□君の傍に
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三年の先輩が部活を引退してから、恋人である忍足さんと帰る時間も合わなくなった。
そして今日は、たまたま時間が重なって一緒に帰れる日。
・・・だったはず、
「・・・俺はもう、必要ないのかもしれない」
校門で忍足さんを待っていると、校舎から出て来た忍足さんの右手には・・・
見知らぬ、女の人の手が握られている。
俺は、それ以上その光景を見たくなくてその場を走り去った。
"手を繋ぐ"
恋人なら普通の行為かもしれない。
だけど俺と忍足さんは、その"普通"の行為ができない。
世間では認められていない"同性愛"
ただ"人"を好きになっただけなのに。
認められない、愛。
所詮、男同士だと。
改めて思い知らされてしまった。
「・・・知っていたはずだ」
承知していたつもりだったのに・・・
こんなにも
胸が痛いなんて。
「なんで、だよっ・・・」
俺はその日、結局、忍足さんとの約束をすっぽかし、電話にもでず、メールも返信をせずに布団へと潜り込んだ。
「・・・朝、か?」
カーテンの隙間から漏れる光で目覚める。