牧場物語長編
□永遠の時間をキミと――。
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【華、それは散るから美しい】
春、ワッフルタウンはモラの花が満開だ。
華の匂いが気分をやわらげてくれる。
「――でも華って散ってるほうが綺麗なのに」
そんな中、一人の女の子が溜息をつく。
そして咲き乱れるモラの花に息を吹きかけて――散らせてしまう。
「やっぱ華は散ってたほうが美しいのよ」
「そうか?」
気がついたとき、隣りには少年が居た。
「うん、私は花が散る瞬間が一番好き。ギルはどうなの?」
「僕は咲いてるほうが好きだな」
ギルと呼ばれた少年はそう答えると広場のほうへ向かう。
ギル、町長の一人息子――。
「何処行くの?」
「僕はキミほど暇じゃないからな」
「キミじゃなくてアカリ! 私にも名前くらいあるんだから!」
少女――アカリはわざと大きな声でギルに言う。
怒ったような言い方だが、怒ってはいない。
これがいつもの光景だった。
華は散るほうが美しい。
永遠に咲き続ける心の華より――。
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