短編
□見上げた先には
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冷たい冬の風が俺を擦り抜けていった。
それと同時に俺の耳に届いた、聞きたかった声。
「白石。」
「千歳!?どうして・・・!」
「白石に会いたくなったけんね」
そう笑った千歳はやっぱり輝いていて。
さっきまで感じていた、どこか息苦しい思いも、知らぬ間に消えていた。
「来るの遅いわ、アホ。練習もう始まってんで」
「すまん白石、時計持っとらんかっとばい。待たせて悪かったたいね」
「別に誰も待っとらんわ」
冷たく言い放てば、ゆっくり近づいてきた千歳が俺を真っすぐに見据えてくる。
「そげんこと言って。さっき、来るのが遅かって言ったんは、誰ばいねぇ?」
「うっさいわ。早よ着替えてこいや」
「はぁ・・・厳しい部長たい。ばってん、少し怒った顔もむぞらしかよ」
気恥ずかしい言葉をさらっと言い放ち、俺の頭を撫でてくる。
軽く睨んでみるも、笑顔は崩れず、流れ込む妙な安心感に胸がいっぱいで、俺は言葉を詰まらせた。
胸がいっぱいになるのは
見上げた先に空じゃなく
見慣れた笑顔があるから
自由と言う名の君探して
ほらね、やっと見つけた
お次、後書き。