短編
□壊したくない関係
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「あら?
藤次郎さん、今日もいらしたんですか?」
「なんだ?
来ちゃ悪いのか?」
「そんな事ありませんよ。」
クスクスと笑うこいつは、あか。
農民の娘で、前に俺が怪我をして倒れていた所を助けてくれたやつだ。
俺はそれ以来、あまり知られていない藤次郎の名で時々遊びに来る。
小十郎にとやかく言われるのは面倒だが、それほど苦にはならない。
「何か、考え事ですか?
眉間に皺がよってますよ。」
「あぁ。
ちょっとな。」
……Shit!!
気が付かなかった。
「ほどほどにしてくださいね。」
あかは俺から離れて行ってしまった。
もし、俺が奥州筆頭の伊達政宗だと話してしまったら、彼女は受け入れてくれるだろうか?
それとも、金目当てに寄ってくる周りの女と一緒になるのだろうか?
もし、この俺が胸につっかえるモヤモヤした気持ちを素直に言えれば、何か変わるのだろうか?
彼女は、俺を愛してくれるだろうか?
母上のように愛してくれないのだろうか?
愛してくれないなら、伝えないほうがいいのかも知れない。
いっそ、このままの関係で……
壊したくない関係
(愛してると伝えるのが怖い……)