ペテン師の夜

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「ここかな?」


少し迷いながらもたどり着いた家は和風の家で、少し大きなお屋敷みたいな感じだった。


表札には、ちゃんと志摩の名字が書いてあるが、間違っていたらと思うと簡単にチャイムを押せなかった。


………どうしよう。
このまま家の前でウロウロするわけにはいかないし……。


「あの、うちに何かご用ですか?」


家の前で考え込んで立ち止まっていると、この家の住人が帰ってきたみたいだ。


………この声、どこかで聞いたような気が……


「すみません、ここが八百造さんのお宅だと伺ったのですが……」


そう言いながら私が振り替えると、朝に道を教えてくれた黒髪の男の人が立っていた。


「あれ!?
朝の子やん。
八百造は俺のお父やけど……。
お父のお知り合いですか?」


「朝はお世話になりました。
私、今日からお世話になる事になってます。
池田あかと申します。」


「とりあえず、家入ろか。
話は聞いとるさかい。」


そういうと黒髪の人は家に入っていってしまった。


だから、私も後を着いて入った。


「こっちに居る間は、この部屋使ってや。」


通された部屋は、少し広い和室だった。


「はい。
ありがとうございます。
あの、お名前教えて貰ってもいいですか?」


「そや、まだやったなぁ。
俺、次男の柔造や。
簡単に家の中案内するわ。」


柔造さんはそういうと、いろいろ案内してくれた。


畑があるのは少しビックリした。


そんなこんなでしばらく家を歩き回った後、居間でお茶を柔造さんと一緒に飲みながらくつろいでいた。


「そや、池田さんは廉造と同い年やったねぇ。」


「はい、そうです。」


「そやのにもう上一級ってすごいわ。
あのドアホにも見習わせなアカンわ。」


そうやって柔造さんが言ってくるものだから、私は笑ってしまった。


「フフッ。
そうですね。
志摩くんはもう少し頑張れば何とかなりそうなんですが……。」


「アイツには無理やろうなぁ。」


柔造さんも少し笑っていた。
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