ペテン師の夜
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「先生、調子悪いんで保健室行ってきてもイイですか?」
「大丈夫?
無理はしないで、早く行ってらっしゃい。」
「はい。」
そんな口実で私は授業を抜けた。
と言っても、ただ単にサボりで抜けたわけではない。
またも、任務が入ったのだ。
上級祓魔師が足りないなどと言う理由で、私の所にはフェレス卿直々に連絡が入ったりする。
あー、めんどくさ。
鍵で道具部屋に入り、簡単に用意をして現場に向かう。
今回は、猫又(ケット・シー)の退治のようだ。
……猫又か。
藤本神父を思い出すな…。
私は何年も前に、藤本神父と猫又退治に行った事がある。
確か、候補生だった奥村雪男も一緒に。
あの時、神父は血を1滴も流さずに事態の収拾した。
それを見て、密かに尊敬の念を持ったのを覚えている。
それから何年もたったある日、神父は私にマタタビ酒をくれた。
もし、クロが暴れたらやってくれと。
今回のターゲットはクロじゃないけど、猫又には変わりない。
神父が亡くなった今、このマタタビ酒を作れる人はもう居ないけど、今回の任務には必要だと思う。
だから、少しだけクロのために残してあげて、残りの分は今回暴れている猫又にあげようと思う。
神父が、クロと仲直りした時のように。