企画

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「男子って、何もらったら嬉しいの?」


雪男を目の前に座らせ、
私と雪男の面談が始まった。
雪男は苦笑している。

塾では教師、なら今は単なる同級生。
敬語なんて使う必要は無い、と私はいつも通りに話す。

メモを取る準備は出来ている。
私はペンを握ると
雪男の言ったことを逃さぬよう書く体勢に入った。


「人によりますからね」

「子猫丸と似たこと言うねー」

「事実ですよ」


堅苦しい敬語を崩せ、と前に言ったのだが
どうしても治らないのが、
この人の悲しい性分のようだ。


私は机の上にメモ帳とペンを置いた。


「じゃあさ、先生は勝呂くんの好きな物はなんだと思いますか」


教師目線で答えて!!
と迫ってみたが、わかりません。
の一言で呆気なく終了。

この人は真面目に相談される気があるのだろうか。

となんとも偉そうな思考を持ち合わせている自分に苦笑した。


「あげる物が無理なら、料理にしたらどうですか?」

「りょうり?」

「ケーキとか、お菓子とか
お弁当とか」


その発想は無かったかも。

ただね、先生聞いてください。
一つ落とし穴があるんです。


「雪男、私料理なんてほっとんど出来ないよ」

「・・・・・・」


雪男が驚いた表情をしている。
瞬きを繰り返して、
私を凝視している。


「・・・蘭さんは、本当に女性なんですか」

「ひっどぉぉぉい!!
差別だ差別!!
女子だから料理出来るなんて偏見だ!!」


そりゃゆで卵とかくらいなら余裕だけど、
そんなもの
どうラッピングしてどうプレゼントするのか。
どんな顔で
勝呂!!誕生日おめでとう!!
なんて言うのか。


「兄さんが料理出来るし、
教わったらどう?
ケーキは分からないけど、料理くらいなら出来るから」

「うんっ」


とりあえず燐に料理を教わろう。
けど料理だけじゃ、
正直心許ない。


「なんかないかなぁ、プレゼント」


メモ帳にぐりぐりと落書きをする。
雪男が、
それくらい授業も真面目にしてくれたら助かるんだけど
と言っているがスルー。


「あ」


雪男が小さく声を出したのが聞こえて、
私は顔をあげた。


「髪留めはどうですか」

「髪留め?
あのぱちんぱちんのやつ?」

「ぱちんぱちんがよくわかりませんが、そうです
兄さんに一つあげてたし、髪留めでもプレゼントしたらどうですか?」


確かに勝呂は
ペソンとしたら髪が長い。
前髪も普段はうっとおしいみたいだし、

私は口を弧に結ぶとにんまり笑う。


「うんっ!!
それにする!!
とびきり可愛いの選んで来る!!」

「可愛いのって・・・勝呂くんにあげるんですよね・・・?」


私はおっしゃーとかなんか叫んで
椅子から腰を上げる。
ばたばた鞄に荷物をぶち込んで
雪男に手を振った。


「また明日ね!!」


意気揚々と教室を飛び越す私のうしろから

明日は日曜日です、なんて声とため息が聞こえた気がしたような
しなかったような。








プレゼントは
(ぱちんぱちんにしましょう)









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