企画

□Un Happy HALLOW WEEN
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「ちょっ、嫌っ!!
先輩っ!!本当に嫌です勘弁してくださいっ!!」



事の始まりは、魔の30分前。






日も落ちて、明日も学校だし準備しとかないとなーと私は寮の自室でのんびりしていた。
宿題も終わった、晩御飯は友達が帰ってきたら楽しく食べよう。
そんな風にいつも通りの生活を送っていたはずだったのに。

「蘭ーっっっ!!
ちょっと体貸せ!!」

とご機嫌に乗り込んできたのは
1つ上の先輩、北条先輩だった。
あー、アルコール入ってる。
そうすぐに分かって私は一切関わりたく無かったのに・・・。


「・・・はいなんでしょう・・・」

「今日はなんの日ー??」

「今日?10月31日ですよね??
えぇっと・・・あ、ハ」

「そうだハロウィン!!
楽しいハロウィンだぞ可愛い後輩っ!!」

「は、はぁ・・・」


素面でもテンションの高い、
明るい先輩だけど
アルコールが入ればそのキャラは更に酷くなる。

第一に、人の話を聞かない。


「なんですか?
私お菓子とか用意してないですよ??」

「分かってる分かってる
あたしはお菓子なんかよりも、楽しめるハロウィンの為にここに居るのー!!
分かる!?」

「は、はぁ・・・」


生返事を返しながら先輩の手元に目をやれば
何やら大きな包みを抱えてらっしゃった。

この時点で帰ってもらえばよかったのに、
私ってば馬鹿っ
「いいですよ」なんて適当に返した返事のせいで
悪夢のようなハロウィンを過ごすハメになったのだ。


「まずは先輩からのハロウィンプレゼントな
有り難く受け取って
気とか使わなくていいからさぁ!!」

「ありがとう、ございます」


差し出される包み。
可愛い包装紙で包まれていて、見た目の割に軽い。
柔らかくて、マフラーか何かだろうか。

先輩はハロウィンをクリスマスか何かと勘違いしてるのかな。
まぁ元々ちょっと頭の弱い先輩だけど。


開けろ開けろと急かされて
私は二つ返事で頬を緩めながらテープを剥がす。

こんな先輩でも後輩思いの優しい先輩。
気使いが嬉しくて
照れながらありがとうございます、ともう一度ちゃんとお礼を言う。


「やっぱり私先輩に何か返さないとですよね??
なんか良いものっぽいし・・・」


ガサガサ開ける中で指に触れた感触は布。
ふわりとしていて、高いんじゃないかと心配になる。
慌てて顔を上げれば
先輩はにこやかに笑っていた。


「大丈夫大丈夫!!
セール品だし、お返しなら今から貰うし!!」


あ、貰うつもりなんですね。

内心ズッコケながらも苦笑して
また手元に目をやる。





固まった。




「・・・なんですか・・・これ・・・」

「んぅ?
えーとねぇ、

魔女のコスプレ衣装だな
しかも猫セット!!可愛いでしょ!?
絶対蘭に似合うと」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!?」


私の腕は反射的にそれを掴んで叫びながら
先輩に投げつけていた。

馬鹿だとは思ってたし変態なのも承知してた!
けどここまでだなんて・・・


「何すんだよーっ」

「こっちの台詞ですからっ!?
何!?私が着るの!?
嫌ですよっ絶対嫌!!
何ムッとしてるんですか!!」


黙ってれば美人の先輩。
スタイルだっていいのにどうしてこんな残念なんだろう。


「はぁ??
こちとら可愛い後輩の為にわざわざ買ってきたのにそんな言い草?

さっきまでは可愛い顔で笑いながら
『ふゎゎぁっ!!ぁりがとぅござぃますぅーっ!!』
なんて言ってたのにさぁ」


言ってない!!
そんなぶりっ子みたいな言い方してない!!
指をくわえるな!!
私はふわぁなんて言わない!!


「とにかく、絶対着ませんから!!
嫌です!!
先輩が着たらいいんです!!」


誰がそんな胸の開けてスカート丈の異常に短い服着なきゃいけないんだ。
そっぽを向いて
着ない、と態度でも宣言していた。
まさにその瞬間。






「んふふふー
あたしがさ、そお簡単に諦める女に見える?」

「え」

「ぬるぽぉぉぉっ!!」


ガッ!!
と手首を捕まれてその場に押し倒される。
流石元剣道部のエース。
異常に力がお強いようで、むしろ骨が悲鳴をあげている。


「痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!!
先輩っへんな技決まってますからっ!!」

「はーい脱ぎ脱ぎしましょーねぇ」

「いやぁぁぁぁ!?
犯されるっ!!いやぁぁぁぁっ!!」

次々に服を剥かれていく。
お父さんお母さんごめんなさい。
私はもうお嫁にはいけません。















「かーわーいーいーっ!!」


「ぅ・・・っぐすっ・・・
ひっく・・・」


そして魔の30分からの
今に至る。

着ていたジャージは先輩の腕の中。
私は悲惨にも魔女のドレスに猫耳しっぽという黒歴史な出で立ちをしていた。
あぁ、死にたい。


「流石あたしが見立てただけあるわね
完璧だわっ
胸の開き具合、スカートの丈・・・そして猫耳!!」

「なんで帽子じゃなく猫耳!?」

「萌えるから」

「うぜぇぇぇぇっ!!」


しっぽは内側にフックみたいな感じで付けているらしい。
つまりキーホルダーテール。
ていうか寒い。
この時期にノースリーブって、肩出しってどうなの。



カシャッ


不意に嫌な音が部屋に響いた。
背中を冷たい汗が伝う。
恐る恐る顔を上げて、音の根源に目をやった。



「あ、ブレた」

「・・・っ・・・せんぱい・・・?」


「はーい撮るよー
はいチーズ」


握られた携帯。
片手には、黒塗り一眼レフ。

私は穏やかな表情で、ニッコリと
それはそれはかのガウタマ・シッダールタが悟り、仏陀となった時のように微笑んだ。








「出来るかぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「あっこら!!
蘭っ!!どこ行くんだよっ!!」



脱兎の如く部屋から飛び出した私は泣きながら走った。



後ろから響く先輩の声に呪いをかけながら
私は幸運にも誰も居ない廊下を一人走って行った。





奥村 燐
勝呂 竜士
志摩 廉造









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