企画

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すっかり外も暗くなって、
誕生日もずれてしまった訳だけど
なんとか女子寮の私の部屋に勝呂を押し込んだ。


机の上に
気温で少し形の崩れたケーキを置く。


「えー、と
ごめんケーキ形ちょっとおかしいけど・・・」

「い、いやかまへん」


やっぱ女子寮ということで
勝呂も居心地があんまり良くないのか落ち着かないみたいだ。

同室の友達が居ないのは確認済みで、
二人きりという特別な環境に緊張してるのは
私も同じだけど。


「勝呂、 遅れたけど
誕生日おめでとう」

「・・・おん」


頬を掻きながら、視線をずらす。
なんとなくあんな騒ぎの後だし
話題も作りにくい。

私はいそいそケーキを切り分けて皿に置く。
勝呂の前にそれを置くと
おおきに、と笑ってくれたので
少し私の方も頬が緩んだ。


「味は保障するよっ!!
・・・まぁ、燐がほぼ作ったみたいなもんだけど・・・」


語尾が弱々しくなったのは気にしない。
勝呂にフォークを渡して
私もさっさとケーキにフォークを突き刺して口に運んだ。

味はやっぱり、美味しい。


「ん、うまい」

「だねーっ
流石燐だわー」

「お前も一緒に作ったからやろが」

「・・・あ、りがと」


少し顔が熱くなったのを見られたく無かったので
私は顔を逸らせながら口にケーキを運んだ。

勝呂って
なんでこう時々恥ずかしいこと言って来るんだろう・・・。


「口」

「っへ、?」

「ついとる、ケーキ」


勝呂に指摘されて
慌てて拭う。
けど取れて無いみたいで、勝呂は目の前で意地悪く笑ってるし。


「、本当についてんのっ??」

「蘭」

「もうなにー??」


勝呂に呼ばれて、そっちに顔を向けると
私の腕を引いて
目の前に勝呂の顔があって


「、ん・・・!?ふ、っ」


突然の事で、頭の中が真っ白になる。
ぬるり、と軽く舐められると
口の中に舌が入ってきて
私は勝呂の胸辺りを押し返す。


「な、・・・にっ」

「付いとったから取ったったんやろが」

「いっいらないそんなサービスっ!!」


恥ずかしくて勝呂と間をとる。
勝呂がにやにやと笑ってるのが腹立って睨みつけても
怖くない、と笑われてしまった。
なんだこいつむかつく。


「・・・馬鹿勝呂っ
ハゲろ」

「ガキやな」


ぷーと膨らませた頬を掴まれて
口の中の空気が抜ける。
悪態を付いても勝呂は馬鹿にしたように笑う。

そんな勝呂の顔面に
私は小さい紙袋を軽くたたき付けた。


「!?っなにすんねんっ!!」

「プレゼントだよ有り難く受け取りなさい」

「・・・・・・、おん」


驚いたみたいに私の顔を見てから、紙袋に目を向けて小さい声でお礼を言って来る。
開けんぞ、と一言言ってから
紙袋の中の包装されたプレゼントを手にとって、
べりとシールを剥がす。

中身を見た勝呂は口元を上げて
もう一度お礼を言ってきた。


「どうっすか」

「・・・おおきに、大事に使うわ」

「うんっ」


不意に勝呂がぎゅ、と私を抱きしめた。


「本間ありがとうな」

「何さ、いきなりー」

「・・・感謝しとんのや」


私も応えるように腕を回して抱きしめ返す。

勝呂がゆっくりと体を離したと思うと、
意地悪く笑う姿が目に映る。
その笑顔に少なからず嫌な予感を抱かずにはいられない。


「プレゼント」

「今あげたじゃん」

「蘭が欲しいんやけど」


あぁ、すごく嫌な言葉を聞いた気がする。
距離を取ろうと思っても、
既に勝呂にがっちり手首を掴まれているわけで
私は引き攣った笑顔を向けた。


「や、やだよ?」

「ええやろが」

「友達帰ってくるから!!」

「俺は誕生日やぞ」

「プレゼントあげたじゃん!!」

「お前のが欲しい」


一体なんのスイッチが入ったのか
勝呂は私を離そうとしない。
それどころか距離を少しずつ縮められている気がする。


「・・・勝呂の馬鹿、」

「その馬鹿に惚れとるお前も阿呆やろ」

「・・・否定はしない」


諦めたように力を抜いて苦笑いすると
勝呂は
もう一度キスをしてくる。

私はそっと目を閉じた。












ハッピーバースデー
(私で良ければ貰ってくれる?)











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