企画

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誰かが話してる?
どっかのバカップルかな。

いや、そんな甘ったるい物じゃない。


「・・・え?」


怒鳴り合い、
まるで殴っているような音が聞こえて
私は窓からそっと覗いてみる。


「り、ん」


燐だ。
燐が誰かと喧嘩してるのだ。
もしかしたら誰かに絡まれたのかも知れない。
騒ぎになって人が集まったら大変だ。

私は慌ててサンダルを履いて
外へ飛び出した。


「ふざけんなよっ!!」


がつっという鈍い音が聞こえる。
既に人が集まってるみたいで
側で雪男が、燐を宥めようとしている。
相手は、


「勝呂、・・・!」


勝呂だ。
志摩が勝呂の腕を掴んで押さえようとしている。

皆は私に気づいて無いみたいで
私は呆然とその場に立ち尽くす。


「蘭に謝れよっ!!」

「お前になんでそないな事言われなあかんねん!!」

「あいつが泣いてるからに決まってんだろうが!!」

「関係あらへんやろっ!!」

「兄さんも勝呂くんも、やめてくださいっ!!」


雪男が燐の両腕を羽交い締めにする。
燐も勝呂も
お互いに口や殴られたところが赤く腫れ、血が滲んでいた。


「俺がどうしようが、俺の勝手やろがっ!!」

「勝手な勘違いで、
自分の彼女泣かせてもいいのかよ!!」


雪男や志摩の言葉に聞く耳持たず
二人はガンを飛ばしあって口論している。

私のせいで、
二人は殴り合いまでしてる。
燐は私の為に自分が悪役に回ってまで。


「・・・やめて、」


サンダルで駆け出して、
私は二人の間に割って入った。

皆静まり返って、
不自然な静けさが空気を満たす。
勝呂の顔を見ることが出来なくて
私はじっと地面を睨みつけた。


「・・・蘭、」

「燐ごめん、ありがとう
けど、やめて」


喧嘩はしないで。
そう言うと燐は息を切らしながら、
ごめんと呟く。


「勝呂も、ごめんね」


不自然に唇と声が震える。
勝呂は何も言わなくて、また泣きそうになったから
泣くな泣くな、と必死に言い聞かせた。


「私のせいだからっ、私が悪いの!!
だからそんなことで
勝呂と燐が喧嘩すること無いんだよ!!」


笑顔で燐の方を向けば、
燐は腑に落ちないのか顔をしかめている。

雪男が同情的に私を見て顔を歪めるもんだから、
私は居た堪れなくなってしまった。


「・・・っおかしいだろ、そんなの」

ぎゅ、と唇を噛み締める。
これ以上喋ったら
確実に、泣いてしまう。

燐に胸倉を掴まれて、
燐の顔が目の前に現れる。
目が、怒っている。
悔しそうに私を睨みつけながら。


「、お前はっ誤解されたままでいいのかよ!?」

「・・・っ、それ、は」

「言っとくけどな!
俺も雪男も蘭と何にもしてねぇっ!!」


大声で、
勝呂に言い付ける。
私だって、誤解されたままは嫌だけど
私なんかのせいで二人が喧嘩するのも嫌だ。

燐が私から手を離す。
勝呂を睨みつける様子は、まるで威嚇するみたいに。

私は勝呂を横目で盗み見れば
燐の台詞に驚いたみたいに静かになっていた。


「坊、こんな時にあれですけど
今日何の日か覚えてはります?」

「はぁ?」

「志摩っ、もういいって」

「ごめんなぁ蘭ちゃん
折角黙ってはったのに
堪忍え」


こんな時に言っても、
私が志摩に首を振ってもういい、と言っても
志摩は苦笑いを浮かべて、勝呂に話し掛ける。


「8月20日いうたら、
坊の誕生日やないですか」

「・・・それがなんやねん」

「わかりません?
鈍い人やなぁ」


なんやとっと勝呂が志摩に食ってかかる。
志摩はケロッとした様子で
また口を開く。


「蘭さんは
勝呂くんの為に走り回っていた、ということです」


呆れたような声を出したのは
雪男。

その声に、勝呂は私を凝視する。
その視線に
私はまた困ったように笑って見せた。











声を聞かせて
(やっと顔が見れました)









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