企画

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込み上げる悲しみは、自分ではうまくコントロール出来ずに
まるで怒られた子供みたいに泣いてしまった。


「あー・・・しえみ、ごめんね?
もう平気だから!!」

「本当に大丈夫・・・?」

「全然平気!!大丈夫!!」


恥ずかしくて、照れたように笑えば
しえみは心配そうに眉をひそめている。
優しいなぁ。
私が男だったら絶対くどいてる。


「にしても、あーあ
駄目になっちゃったな誕生日」


勝呂があの調子じゃ、顔も合わせることも叶わないだろうし
プレゼントも
折角のケーキも無駄になってしまいそうだ。

[お前とは合わへん]

あれはもう、別れる宣言だ。
私は彼女でも無くなってしまったのか。


「勝呂って、本当に人の話聞かないよねぇ!!」

「蘭ちゃん・・・」

「しえみがそんな顔する必要ないじゃんっ
折角だししえみ明日遊ぼ!!
あ、後でケーキ片付けるの手伝って!!
出雲も呼んでさっ!!」


捨てるのは勿体ない。
どうせ処分するなら美味しく頂いてやる。

私が笑いながら言っても
しえみは困ったような表情のままで、
もしかしたら甘いの苦手だったりするのかな、と少し心配になった。


「お前はそれでいいのかよ!!」

「っ!?り、燐??」


突然の声に私もしえみもびっくりする。
事の流れを見ていたのか
燐は私としえみの所へ来ると
机をばんっと大きく叩いた。
その音に二人して肩を跳ねさせる。


「折角、誕生日祝おうとしてやったんだろっ!!
プレゼントもケーキも!!
全部あいつの為じゃねえかっ」

「そうだけど、
もういいって
私振られたも同然だしさぁ!!」

「っ・・・!!」

「ごめんね燐ー
折角ケーキ作ったのにねー
大丈夫!!
代わりに皆で食べようよ!!」

「・・・蘭ちゃん、」

「もーしえみ
そんな悲しそうな顔しないでってー」


あまりにもしえみが悲しそうに顔を歪めるから
私は軽くしえみの頭を撫でる。

ふるふるとしえみの首が横に振られた。


「悲しそうなのは、蘭ちゃんだよ」


その言葉に、
私は声を詰まらせた。
余程酷い顔をしていたらしく、
しえみも燐も
辛そうに私に目を向けている。

私は困ったように口元だけで
苦笑した。


















帰り道。
出雲に電話して
ケーキを食べないか、と聞いたら

「あんな奴のおこぼれなんていらない」

だそうで
それをしえみに言って一緒に笑った。
神木さんらしいね、と可愛く笑う。

燐は先に帰ってしまったし、
しえみも
ケーキは遠慮しておくね、とのこと。
結局一人でホールケーキを処分するはめになってしまった。


「どーしよう、これ・・・」


食堂の冷蔵庫にきちんと入れてあったケーキを眺めて
つい溜息を吐く。
今さらながら、でかいなこれ。
燐はりきったなー。


しげしげとケーキを眺めて、
とりあえず写メを取る。
苺の並べ方がゆがんでるのを見て、
自分の雑さ加減に笑った。


「・・・一人で食べきれないぶんは、捨てるかなぁ」


ふと頭に勝呂の顔がよぎって、
鼻の奥がツンと痛くなる。

勝呂に作ったのに、
結局見ることも無く私に食べられて捨てられるなんて
不敏なケーキだ。


包丁を持って、
そっとケーキに宛がう。
さくっと切ってしまおうと包丁でケーキ入刀しようとしたとき


外が、やけに
騒がしく感じた。












いただきます
(捨てられケーキを私が一人で)









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