企画

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プレゼントは買った。
後は料理だ。

私は朝っぱらから意気込んで、そして今
燐と雪男の部屋に押しかけて来た訳だ。

燐はめんどくさそうに頭を掻きながら
仁王立ちする私を見上げる。
雪男は仕事らしい。
部屋には彼の姿は一切見当たらなかった。


「まじですんのかよ・・・」

「あったりまえ
さぁ早く私に料理を教えて!!」

「それが教えてもらう奴の態度かよ」

「今更かしこまったっておかしいもん
さ、早く早く!!」


自前のエプロンを身につけ、
私は燐の腕を引っ張って強引に立たせた。

急ぐんだからさっさと始めたい。

燐に作れるかは謎だけど
とにかくケーキだ。
ケーキを作るためにここにいるんだから。


「俺お菓子とか作ったことねぇんだけど」

「説明みてれば、なんとかなるよ」


ばざばざばざーっと豪快な音がして、
それは私がぶちまけたお菓子作り本であることに
燐は呆気に取られているようだ。

勝呂のケーキのために
どれだけ私は出費するんだろう。


「やっぱさ、王道だろ」

「だねぇ
勝呂甘いもん嫌いそうだし」


無駄にチョコチョコした奴は嫌いそうだなぁ。
あぁでもどのケーキも美味しそう。


私が涎が垂れそうなくらい写真を食い入るように見ているものだから、
燐は私の頭を本でばしっと叩く。


「美味そうとか思ってんだろ」

「えー??そんなことー」

「美味そうでも、作れそうなもんにしろよ
ぶっ、しゅど?のえ、るとか言う奴なんて無理だし」

「、う゛・・・」


ブッシュドノエルがすらっと言えない燐に萌えを感じながらも
私はしぶしぶ本を閉じた。

燐の手の中にある本に目を向ける。
そこには普通の、
王道の生クリームケーキ。


「これでいいだろ」

「おっけー!」


いつの間にやら燐もエプロンにバンダナを身につけて
結構やる気のようだ。
二人でにしし、と笑うと私は燐の後に着いて部屋を出た。



















食堂に行って調理に取り掛かる。
割と小綺麗で設備もあって
充実してるなぁ、と感心した。


燐は手際よくボウルの中身を掻き混ぜたり、材料を入れたりしてる。
どこに出しても恥ずかしくない良い嫁だ。


「もう燐私んとこに嫁に来なよ」

「っ!?、はぁぁっ!?」

「そんなびっくりしなくても」


馬鹿じゃねえの!!と一言罵倒されて
私は口を尖らせた。
燐に馬鹿と言われるくらいなら今ここにある生卵を飲み干してやるよ!!
しないけど。


「、いたっ!!」


不意に指に痛みが走った。
指先を見れば赤い血がぷっくりと球体を作っている。


「っ大丈夫か??」

「平気平気、ちょっと切っただけ」

「じっとしとけって、ちょっと・・・」


ガサガサそこらへんを漁る燐を私は首を傾げた。


「あった!!
これ、貼っとけよ」

「、絆創膏・・・?」


燐の手に持たれているのは可愛い絆創膏。
猫がプリントされていて、
あぁ子猫丸にあげたら喜ぶなぁ、なんて一人考える。

その間にも燐は私の指先に絆創膏を貼付けた。


べたっと。


「ちょっ燐貼り方雑っ!!」

「うっ、うるせぇ!!」


せっかくの猫の顔にシワが入ってしまい、
不気味な生物が指先に住むことになってしまった。

燐は心配そうに私を気にかけているようで
私はニッコリ笑ってやる。


「ありがとっ」

「・・・おうっ!!」


それを合図にケーキ作りは再開されたが、
私は怪我してる、という理由のために
最後のイチゴの飾り付けだけを任されることになってしまった。
これじゃぁ燐の手作りケーキだ。


燐が型に流し込んだ生地をオーブンの中に入れ
スイッチを数回押す。


「勝呂、喜ぶといいな!!」


無邪気な笑顔を見せながら、燐はそう言う。
本当可愛い奴だなぁ。
暴力暴言さえなければきっとモテモテだな。

そんな燐に向かって私も答えるように口角をあげ笑う。


「そうだねーっ!!」


勝呂の誕生日まであと少し。



喜ぶ姿を想像して、
私は口に含んだお茶を吹き出した。













貴方の笑顔
(はしゃぐ貴方が想像出来ません)









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