short story

□アネモネ、期待
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手を伸ばしても
手に入れられないものは
きっと一生
手に入らない。



心が痛いよう

心が痛いよう


胸の内、
足掻き続ける無力な感情。
貴方のその横顔が
私の胸の内を荒らします。


分かりますまい。

分かりますまい。


命ひとひら
椿の花弁。


「椿はなんとも自分勝手
人の愛無しでは生きれない」


堕つる時でさえ
大きな音を鳴らして存在を示すつもりだというのだから。

真っ赤な花弁を広がって
まぁまるで血液のようだね、と
私が笑えば貴方は泣きそうになる。


「俺では、あかんのか」


人が悪い。
分かってるくせに。

むしろ私が
どれだけ貴方を渇望しているかご存知でしょう。

アサガオは地に伏せた。
アネモネは散った。
エーデルワイスは消えて逝く。


「椿も同様に」


「貴方を愛して幸を手には入れられないの」

「俺は好きや」

「私も好きだよ」


椿は娼婦でないといけない。
椿は没落しなければならない。
椿は堕つる約束です。


せめて最後に貴方には

椿の甘い匂いを移しましょう。









(私は貴方の)


(アネモネを裏切る)








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