shortDREAM

□約束のKISS
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「雪男、眉間」


隣で作業している雪男に
私は声をかけた。
本人は、え?と声を出した後、
はっとしたように眉間を揉んだ。


「最近老けたな」

「誰のせいでしょうかね」

「えぇ誰だろー」

「幸せな頭で羨ましいですよ」


にっこりと笑いながら真っ黒なことを連発してくる。
相当疲れてるなぁ、と私は笑った。


「もう少し、上司がまともだったら僕も気が楽なんですけど」

「あははは、耳が痛いなぁ」


シュラのことも含んでいるのだろう。
上司がこうも変な集団だと
可愛い部下が苦労するのは当たり前か。


「お願いですから
椿さんもちゃんと仕事してください」

「してるよちゃーんと」

「実践だけが仕事じゃない」


ごもっともだ。
仕事はしてるが、私の仕事の仕方はどうも雪男に気に食わないらしい。


「怪我をしたらどうするんだ
貴女の戦い方は、正直いつ死んでもおかしくない」


パソコンに向かいながら、
淡々と私の戦い方を非難する。
こちらも正直、耳たこである。


「あまり力に頼りすぎない、
いつか飲まれるぞ」

「奥村先生、職務中ですよ」

「っ、・・・すいません」


私がそう言うと
雪男は慌てて敬語に直す。
つくづく面白い奴だ。


「私は大丈夫ですよせんせ」



微笑んで言うと、雪男は顔をあげて
レンズ越しに私を見る。

私は立ってコートを羽織り、シワを直していく。


「奥村先生が帰れというなら、
私はちゃんと生きて帰りますから」

「それは、素晴らしい心構えですね」


雪男は椅子から腰をあげると
私の手首を掴んで強く引っ張る。
足がよろけて、私は雪男に引き寄せられる形になった。

そんな彼は
私にキスをしてくる。
一体どこで覚えて来るのこの子。
前よりも、うまくなってる。


「・・・ん、ふ」

「、・・・ん・・・」


ゆっくり顔が離れて
雪男は熱っぽく私を見据える。
腰に下りていく手を私は掴んで笑顔を向けた。


「78点」


彼の胸板を押し返し、するりと腕の中から逃れる。


「まだまだだな、優等生」

「・・・ほっといてください」


あぁまた眉間にしわが寄ってる。

私は刀を持つと
カツカツ音を鳴らしながら職務室の扉に鍵を刺す。


「じゃ、行ってくるね雪男」

「いってらっしゃい、椿」


お互いに笑顔を浮かべて。


私は扉を開けると、職務室を出てるまた、扉を閉める



死にませんの約束は
苦いコーヒーの味がした。





約束のKISS
(ブラックコーヒーは嫌いです)





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