shortDREAM

□君が背中を追い駆ける
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子猫丸は
可愛いと思う。


本人曰く、
牛乳飲んでも伸びない背とか
猫好きなとことか
もう、笑顔とかはとくに可愛いと思う。

まるで可愛い弟のようだ。



「椿さん、どないかしはりましたか?」

「んー?」


私の視線に気づいた子猫丸は
宿題なんだろうか、カリカリと書いていた手を止めて
顔を上げる。
キョトンとした表情はまた可愛い。


「子猫丸が可愛いと思って」


率直な感想を述べると
子猫丸はあはは、と苦笑した。


「可愛い言われても、正直複雑ですよ」

「まぁ男の子に向ける言葉じゃないだろうしね」

「分かってはるんやったら、からかわんたってください」


可愛い。
子猫丸は、可愛い。


「子猫丸はいい子だね
私がよそ者でも、受け入れた」

「・・・それは、」


私は生まれも育ちも京都は関係ない。
だから明陀に関わるのは、
正直皆いい気じゃないだろう。
なのに子猫丸は
私にいつも笑いかけて、
後ろをついて来た。


「最近は、昔みたいに私の後ろを付かなくなっちゃったけどね」


手のかからない、
可愛い弟のようで、
とても愛しく可愛い。


「だから私は子猫丸の
いいお姉ちゃんでいたいんだけどなぁ」


なかなかそうも上手くいかないものだ。
実質、年上の私よりも
子猫丸のが頭もいい。
何より背負うものも違う。

模範的な姉には一歩も近づけないようだ。


「・・・椿さんは
ちゃんと明陀や坊達のことを考えてくれはる」


私がやれやれと笑いかけると
子猫丸は口を開いて言葉を紡いだ。


「出張所の皆かて
よう分かってはりますよ
椿さんはもう明陀の人間やって」


ちゃいますか?
と聞かれて、私は驚いたように目を見開いた。


「・・・そうかなぁ」

「そうですよ」

「私、明陀の人間かな」

「僕は、そう思います」


それ以前に、
僕のお姉さんなんちゃうんですか?


子猫丸の言葉は
ついつい私の頬を緩めてしまう。
だらしなく口元を上げて笑ってしまった。


「ふふ、っ
あーあ、もっと手のかかる弟でもよかったのに」

「手のかかる姉さんがおらはるのに、
その下まで手がかかるようやったら笑われてまいますよ」

「ちょ、何気にひどいよ子猫丸」


子猫丸はまた可愛らしくにっこり笑う。
私はその笑顔が愛しい。


「これからも、手のかかるお姉ちゃんをよろしくね」

「いえいえこちらこそ」


来年には、子猫丸も上京して
東京の高校に行く。
寂しくなるなぁ、と思うけど
それが子猫丸の道なら


「お姉ちゃんは応援したるからな」


頭を優しく撫でて
私は出来るだけ優しく笑いかけた。


出来の悪い姉に向かって
弟もまた、
笑って返してくれるのです。











君が背中を追い翔ける
(そんな姉にはなれないけれど)





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