shortDREAM

□異性種間好遊
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見た目だけなら、
私はただの女子高生らしい。


なぜか私は聖十字学園に通って、
なぜか私は祓魔塾なんかに通っている。
可愛いピンクのスカートなんか穿いて、
リボンを胸に飾って
私は聖十字の女子高生を装っているのだ。


「椿ちゃんは本間別嬪さんやなぁ
かいらしいとかそんなやったら足りんくらいやで」

「あははっ
ありがとね志摩」

「本間やのにー」


これもなれたやり取り。
志摩は女の子には手が早いからこれはもう毎日するやり取りな訳だ。

勿論私だって一応女の子だから、
そういわれて悪い気はしないわけだけれど。


「ほなまた明日」

「うんばいばい
勝呂も子猫丸も」

「おん、ほなな」

「失礼します」


軽く手を振って笑顔を浮かべながら別れる。
子猫丸には軽く会釈付きで。


男子寮に向かう三人を見送った後、
私はまた足を塾へ運ぶ。
これもほぼ日課で、むしろこうしないと私は怒られる。


「椿」


足元を見ていた目線を上げれば、
私は顔を歪めた。
私の大嫌いな奥村雪男が立っている。
私は彼に会いに来たた訳だけど
私は今の奥村雪男が大嫌いだ。


「・・・制服じゃない」

「下に着てる」

「どうしてコート」

「時間が無かったんだから、許してよ」


まるで子供みたいな文句だ。
けど事実、
祓魔師の彼は嫌いなんだから、どうしようもないじゃないか。

ばさりと目の前でコートを脱いだ彼に抱き着いて、
雪男に顔を埋める。

大きな身体。
男女の差を表すみたいに作られた体つきも引っくるめて
私は今の自分が嫌い。

優しく髪を梳かれるように撫でられる度
心地よさに目を細める。
その姿が猫みたいだ、と
よく雪男は目尻を下げて笑う。
そんな雪男が大好き。


「・・・ゆきお、」


暗くなりつつある空の下。
私と雪男はお互いを抱きしめて何度か軽く唇を交わす。
ちゅ、とリップ音がするとき
あぁこの人が好きなんだなと実感出来るから、
雪男とのキスは嫌いじゃない。

ふと雪男の眉間にしわが寄っているのを見て、
私は彼の顔を両手で包んで下から見上げる。
どうしたの、と無言で聞けば
薄い唇から紡がれる言葉が、私を少し叱責していた。


「チャーム、使ったよね」

「使ってないよ」

「嘘」


誘惑する能力のうち一つを、
チャームと呼ぶらしい。
私も最近知ったのだけど。

不機嫌そうな雪男に背伸びをして軽く口付ける。
私からキスをした後の、
焦ったような彼の顔が好きだ。

くすくすと笑いながら私は口を開く。


「仕方ないよ
私はサキュバスだもん」


本来なら祓われなきゃいけない私がどうしてこんなところにいるか。
全てはあの男、
メフィストのせいだけど
大方の理由は
私が雪男を好きで彼が私を好きになったから。
勿論、ちゃんと生理的な現象で。


「だから使い魔として契約すればよかったのに
そうすれば私は悪魔としての能力は縛られるから」

「けど、そうすれば貴女は普通に生活を出来ない」


常に雪男から離れられなくなる。

普通に女子高生をするためには、
契約ではなく
恋人という関係だけで雪男に縛られてなければいけない。
しかも塾じゃ、
皆の手前キス所か手を繋ぐことすらできない。

けど彼はあくまでも
私を彼女として扱ってくれる。
だから絶対に使い魔の契約をしようとはしないのだ。


「僕は、椿を
一人の女性としてしか愛したくない」

「サキュバスなのに」

「淫技を使わなかったら何も変わらないじゃないか」

「変な人」


まるで人間に接するみたいに触れるのね

壊れものみたいに、
優しいその手が唇をなぞって
もう一度キスをする。
そのキスは恋人同士の愛を誓うキス。


「好き、雪男」

「僕も好きだよ」

「知ってるよ」

「僕も分かってる」


くすぐったいように微笑めば、
レンズの向こうで雪男が目を細めて笑う。

くしゃくしゃ頭を撫でられて
私がんーっと言いながら瞼を閉じれば
また雪男が笑う声が聞こえた。


「じゃあそろそろ帰ろうか」


するりと絡まった指に答えるように
私もまた
手の甲を少し爪でひっかくようにして指を絡めた。










異性種間好遊
(悪魔でもあいしてくれるのね)









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