shortDREAM

□腰痛のち
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*多少ではありますが微裏表現があります。
自己責任でお読みください。












「・・・腰痛い」


ひどい鈍痛。
寝返りを打つのさえ苦痛なほど痛みがひどい。
自分の力量や能力を考えれば勿論デスクワークがピッタリなわけで、
ただどうしても姿勢が同じだと腰を痛めるらしい。


「なのにこいつは・・・っ!!」


人の気も知らないでぐーぐー寝息を立てている同僚。
もとい、恋人金造。

派手な見た目はこの金髪や整った顔のせい。
黙ってれば男前。
ただおっぱじめ始めるとそこらへんのチンピラと何一つ変わらない。


「いっ!?・・・たぁっ、・・・」


金髪男を睨みつけているとまた腰に激痛が走る。
私は呻くように布団に身を預けた。

仕事の痛みに加え、
夜の方、つまり
情事の痛みが体を襲う。
もう歳なのかなぁ、と思うと悲しくなるので考えない。


金造とするのが、嫌な訳ではないのだ。
そうじゃなくて、ただ単純に
金造との情事がかなり、強引なだけで。

弟と同じで頭の中は変なことしか考えてないのだろうか。
お互い仕事上がりの癖に、
この男だけはどうしてこう、元気なんだろう。


「・・・ってかもう3時とか・・・」


明日も仕事だよ?
金造も仕事のはずだ。
毎日ってわけじゃないけど、
なんで飽きもせずに同じ女をこうも抱けるんだろう。
こいつの性欲には、赤蝮もびっくりだ。


「蝮ちゃんは呆れるのかな・・・たたた・・・」


なんとか腰を庇いながら座る。
こんなことなら、
酒で潰してやればよかった。

そもそも畳、そもそも敷布団、
腰を痛めるのは当たり前だ。
多少私にも非はあるかもしれないけど。


「どこいくんや」


携帯を探そうとコートを手探りしていたら
床についていた方の手首に絡み付くみたいに指が触れる。

骨張った指で所々マメが出来ている手の平が加減をしらず力を入れるもんだから
暗闇の中私は顔を歪めた。


「痛、いんですけど」

「どこ、行くんや
まだ仕事の時間ちゃうやんけ」

「もーうるさいっ
柔造さんとか起きるよ??」


叱るみたいに小声で言うけど
暗闇になれた目が金造の不機嫌そうな顔を見て、
私はため息を吐く。


「まだ寝とけや
起きるんやったらヤるぞ」

「死ね
今すぐにここで死ね」


不吉な言葉を聞いて、
馬鹿の頭を一発叩く。
そんな私の一発も効かないみたいで
後ろからでかい子供に抱きしめられる。


「ちょ、やだっ金造、」

「なんやねん
色気無い声だすなや」


色気無い女と付き合ってんだからそれくらい我慢しやがれこのやろう。

けど金造は、そのまま首筋に顔を埋めるくらいで
流石に変なことはしてこなかった。
多少自重したのかな、と
私も抵抗を諦めて金造に身を任せる。


「・・・本当に、よくも飽きずに
私なんか抱けるよね」


苦笑い混じりに、
先程思ったことを口にする。
肩を抱き抱えるみたいに回された手に、私も手を軽く乗せた。


「阿呆」

「おまっ!?
金造に阿呆とか死んだほうがマシだからっ」

「はぁ!?シバくぞ!!」


ごつんと音がするくらいの頭突きを食らって
私は反動で腰まで痛んで無言の悲鳴を上げる。


私は文句の一つでも言おうかと思った時に
不意に耳に息がかかって私はぴたっと動きを止めた。




「椿やからに決まっとるやろボケ」

「っ・・・!!、さ、いあくっ・・・」


低い声が鼓膜をくすぐる。
私は恥ずかしさを隠すように悪態をつく。


「ボケとか無かったら、最高だったのに、馬鹿」

「照れとるくせに、意地はんなや」

「うざっ!!
っひゃ!?っい゛ったい、馬鹿っ!!」


倒れ込むみたいに、
二人一緒に布団に寝転がる。


「き、んぞ」

「・・・・・・」

「ちょっ、この体勢で寝かせんな馬鹿っ!!
やだもうっ、こ、腰痛っ!」


腕の中でもがいても全く効果が無く、
私は溜息を吐きながら少しだけマシな体勢にする。


「・・・馬鹿だよ、本当にもう」


恥ずかしいのと、嬉しいので顔が緩んで、
ぎゅうと金造の腕を両手で包み込む。


「阿呆馬鹿金造
ボケボケの変態」


聞こえてないのをいいことに
私は言いたい放題悪口を言ってやる。
こんなの聞こえてたら、殺されるし。


「好きだけど」


聞こえて無いから、ほとんど言わないようなことを言う。
やり場の無い恥ずかしさを私は金造の足を軽く蹴ることで発散し
お休み、と呟いて
本日二回目の睡魔に身を委ねた。








腰痛のち
(愛情確認出来ましたよ馬鹿)










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