企画

□事前調査
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勝呂の誕生日らしい。

いや、いますぐというわけでは無いんだけど
8月20日が
どうやら彼の誕生日らしいのだ。

そんな私、
勝呂の彼女である蘭は大変荒れております。




「なっんで、教えてっくれなかったのっ!?」


志摩の衿元を掴んで前後に揺さぶる。
私が荒れてる原因だって、
いわばこいつのせいじゃないか。


「ちょぉっ、やっいっか、いやめっ!!」

「志摩のっ馬鹿!!」

「蘭さん、やめたってください」


鼻息荒く私は志摩の衿元から乱暴に手を離す。
子猫丸が苦笑まじりに私を宥めてくれるので
私は不機嫌な顔を少し緩ませた。


くそぅ可愛いなこいつっ!!


私が危ない目をして子猫丸を見る。
志摩は首を押さえながら口を開いた。


「けど、俺かて知っとる思っとったわけやし」

「・・・もっと早くにその話題を振るべきよ」

「いやいやそないなこと言われてもなぁ」


自分でも、そりゃぁ理不尽なことを言ってるのは分かってる。
けど悔しいじゃないか。

自分の彼氏の誕生日を知らなかったなんて。


勝呂自身あまり自分のことをぺらぺら喋る人じゃない。
これは完全な私の凡ミスだ。
坊ミス。


「速球に聞くわ
勝呂って何が好きなの」

「本間速球やねぇ」

「速球どころか剛速球ちゃいます?」


私が二人に向き直って言えば、
子猫丸、志摩の順に口を開く。
けど実際、この二人が頼りだ。
正直何をあげたらいいのかわからないんだから。


「気持ち篭ってはったら、なんでも嬉しい思いますえ?」


子猫丸が目を細めて言って来る姿には、うっかり和んでしまう。

気持ち、とは言うが


「気持ちが篭ってても、ティッシュとかだったら子猫丸やでしょ」

「ティッシュはちょっと遠慮させてもらいます」


丁寧にずばっと断られた。
でも確かにティッシュじゃ愛も感じれない。
私だったら即別れてやる。


「女子はさ、そりゃペアが嬉しいんだけど男子はそうじゃないじゃん?」

「そうなん?」

「多分」


男子ってあんまりペアリングとかだって付けたがらないじゃないか。そういうのをあげても意味がない。


「何か無いかなぁ・・・」


つい溜息が零れてしまった。

何をあげたら喜ぶのだろう。
英単語暗記帳とか、
髪の毛の染料とかシルバーアクセサリーくらいしか思いつかない。


「坊は物欲のあまりあらへん人やさかい」

「まじかっ」


確かにあれが欲しいこれが欲しいと聞かない勝呂だ。
これは、本当に困った。


「こうなったらもう現金?」

「うわぁ夢もカケラもあらしませんやん」


誕生日おめでとう!!
と超スマイリーな笑顔で
現金の入った茶封筒をラッピングしてプレゼント。
無いわー。
自分で考えといてあれだけど、正直無い。
私は自分でその考えに首を振る。


「いっそ蘭ちゃんをラッピングして、私がプレゼントですってぐふっ!?」

「志摩さんはそないなことしか考えつきまへんか?」

「こっ、子猫さんっフォローって・・・っ知ってはる・・・っ?」


馬鹿なことを言う志摩の腹に一発ストレートをお見舞いする。
その横で子猫丸が哀れんだ視線を志摩に送り

私は携帯のスケジュール帳を開いて
小さく唸って頭を抱えた。




勝呂の誕生日まで
あと9日。







事前調査
(役に立ちそうに無いけれど)










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