*main(ATLUS)*

□Samsara
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インド神話の話をしよう。
そう言ったのは神話に詳しい孝介か…。
はたまた博識な直斗だったか。
もしかしたら俺だったのかもしれない。

霧が、寒い。
誰もいないジュネスのフードコートで呟いた。
怖かった。
孝介がまた間違った答えをだすんじゃないかって。
少し冷静になって考えればわかる俺の不甲斐ない思いつきは、孝介ならきっと切ってくれるのに。
記憶の彼方に眠る人を殺した感覚が。
背中を押したあの感触が。
俺から勇気をとりあげてしまう。
孝介の、答えを聞く勇気を。
あのとき、天使がいなくなって、死神がどこかで嗤ってる。
そんな世界で、結局俺は、きっと死神に加担していたんだろうな。
晴れた空を、もう当分見ていない。
この、春。
明日から、俺たちは三年生だ。
きっと、霧も晴れるって。
思っていた日が遠くに感じた。
「花村君」
誰も使わない机を拭いていると、誰も居ないはずのフードコートで声がした。
「天城」
「やっぱりここにいたんだね」
「毎日ここにいるからな」
「いつもここにいるもんね」
いつもの重みが、苦しい。
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