長い物語
□好きです。
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真っ直ぐ蒼い瞳がカカシを捕らえてやまない。
『俺は先生が、好きだ』
ありったけの気持ちを込めて、ナルトは言い放つ。
カカシは戸惑うように視線を泳がせ、やがて銀色の睫を伏せた。
『すまない、ナルト。俺はお前の気持ちに、応えてやれない』
一瞬、理解出来なかった。
カカシの発した言葉が、何処か遠い国の言葉ように、聞こえた。
『それでも、好きだ』
涙にぼやけたカカシの姿を映し、蒼い瞳が雫を落とす。
ポツリポツリ。
溢れる涙を溢れる思いを、止める事なんて出来ない。
『カカシ先生が好きだ』
涙を流し崩れ落ちるナルトを、カカシは抱き寄せ腕に閉じ込める。
『俺にとってお前は、可愛い部下で、愛しい弟子なんだ。お前が大切なんだよ』
苦しそうに顔を歪め、独白するカカシの腕に力がこもる。
『ごめんな、ナルト』
胸元から聞こえる嗚咽に、カカシは心が引き裂かれそうになる。
ナルト、お前が恋しいから愛しいから。
お前の気持ちは受け取れないんだ。
光輝く道を歩んで行くお前に、汚れきった俺では駄目なんだ。
幾多の屍を踏み締め、血塗られた身体は、最早魂さえ凍える闇に染まっている。
ナルト、好きだよ。
本当はね、大好きだよ。
お前を愛しているんだ。
束の間の今だけは、カカシは愛しい存在を強く掻き抱いた。
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先生、俺の気持ちは何処へ行けばいいんだ?
任務をしていても、頭から離れない銀色の残像。
居るわけもないのに、探してしまう気配。
「ナルト、気を抜くな」
集中出来ないナルトに気合を入れるように、ヤマトが声をかける。
「分かってるってばよ」
ギリッと奥歯を噛み締めて目蓋を閉じ、ナルトは意識を集中する。
今は、任務に集中しろ。
皆の足手まといになるな!!
ナルトはゆっくりと呼吸を整え、全身の血流、心拍数をコントロールする。
薮田に身を潜め、頬を掠める風に意識を乗せ森全体と呼吸を合わせる。
自然と一体になる。
ナルトという存在は絶たれ大地に根付いた草のように風に遊ばれる。
やるじゃないか、ナルト。
完全に気配を消したナルトに舌を巻くヤマト。
落ち着きが無かった子供だと、ついこの前までは思っていたのに…。
ペインと闘い、仙術を会得したナルトは、最早別人だった。
敵を待ち伏せるには、気配を絶つのは当たり前。
仕掛けたトラップを有効に活用し、不意をつき奇襲をかけ敵を生け捕りにする。
まさに、ヤマト達は敵を待ち伏せているのだ。