短い物語

□七夕
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七夕





あの日のアパートから見える夜空は本当に綺麗で忘れられない。
古ぼけた画ぶちのように少し歪んだ窓枠が妙に似合う。


今までの綺麗が覆われる

新しいほんのり温かい美しくさに塗り替えられる。

夜空を覆うように垂れ下がる笹。
色とりどりの飾り。
時折吹く風にゆらゆらと揺れる。


長い笹の天辺にうすい黄色の短冊。
無理やり結んだから。クチャクチャの短冊。
汚い大きな字で書かれた願いは…



──来年もまた、カカシ先生と星を見れますように。

ナルトの書いた細やかな願いは、ほんのりと心を温かくしてくれる。
カカシの冷たくなった心を温める。


満天の天の川さえ眼に入らず。ただただ風に揺れるクチャクチャの短冊をながめる。


たった一夜の逢瀬を、織姫と彦星は何を願いともに過ごすのか…
七夕に秘める願いは人それぞれ。
短冊に願いをこめて祈る。それはある意味、崇高な儀式なのかも知れない。


夜空彼方。
月に寄り添うように雲が流れる。
天の川を途切れ途切れ隠して。




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