記念日

□蝶
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満月に向かって空高く。

白い月明かりが風に乗った粉をきらきらと輝かせる。

もがかれた羽を地面に撒き散らし、切り裂かれる蝶の群れ。

闇への恐怖と高揚。

紙一重の感情がただ時の営みに流される。





鬱々と生い茂る深い森に、ぽかりと空いた穴のような草原。

夜風は吹き抜けて、草木をゆるゆると踊らせていた。

月を切り裂く縦に振られた刃は、鈍い光を返して空気を掠めた。

裂いたのは虚空。

真っ直ぐ闇を見据える蒼い瞳に映るのは、獲物を捕えた深紅の瞳。

「まだまだ」

言葉だけ残して、紅い残像は霞んで消えてしまう。

「なら、引くってばよ!」

銀の刃を脇腹を掠めるように、背後へ突き刺す。

金の髪が微かに後方に揺れて、頬を流れる雫が弧を描く。

キィィィーーン

高い金属音と小さな火花が、闇に光る。

ギチギチと腕に力を込めたまま、寸での所で裂けた刃先を、クナイでカカシは受け止める。

「やるじゃない!」

飛び退く力を利用して、刃の起動を大きく前へ反らす。

キィィーー

鋼の高い音と振動が同時に伝わる。

「うわっ!!」

跳ね返された力に耐えきれず、ナルトは前方に躓く。

勢いを殺せず、地面にごろごろと、無様に転がって行く。

「いってー!!」

ナルトは受け身を取れず、衝撃が痛みとなって骨に響いた。

「だから、甘いんだって」

溜め息まじりの声が背後からすると、首筋に冷たい切っ先が触れる。

「ま、俺の勝ちね」

カカシはクナイを引くと、くるくると器用に指先で回しながら、忍具ポーチに納めた。



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