長い物語

□好きです。
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懐かしい夢を見て、しんみり、ほんわかした気持ち。

伝える事で泡となって消えてしまった俺の気持ち。

好きです。

あなたの事が好きです。

髪を優しく撫でる細く長い指、軽く頭をポンポンと弾む大きな掌。

風にフワフワ揺れて煌めく銀色の髪から覗く、弧を描いて優しく見守る眼差し。

ナルト。と、俺の名を愛しそうに呼ぶ少し低い声。

あなたの全てが好きです。

歳の差なんて背伸びして同性なんて壁忘れて、尊敬とか通り越して抱いた俺の気持ち。

あなたの作り出す世界が好きです。




「ナルトー?何してんの。もう、行くわよ?」

桃色の髪がふんわり風になびいて、サクラは樹に跳躍する。

思い耽っていたナルトは、いきなり現実に引き戻された。

「えっ!?あー!!待ってくれってばよー!!」

慌てて後を追うように、樹に向かって高く跳躍する。

待ちわびた顔をしたヤマトが「しょうがないなぁ」と小さく呟く。

サイは遅れてくるナルトをチラリと見て、傍らのヤマトに微かな声で言う。

「隊長、今日のナルトおかしくありませんか?」
「やっぱり、君もそう思うかい?」
「いつものナルトより静かです」
「サイらしい表現だね。確かに、今日のナルトは元気がないようだね」

近づきつつある後方の二人に視線を送りながら、

「最近のナルトは調子はいいんだが、時おり心ここに在らずのようだね」
「心ここに在らず…」
「まぁ、ナルトの心の問題だからね。今は話してくれまで待つしかないよ」

見守るしかないとサイに言い聞かせるように話す。

サイはただ小さく「はい」と返事をした。

「よし、ナルト達に合流しよう」

サイの肩を軽く叩き、横枝に手を滑らせ、ヤマトは跳び移った。




「すみません、隊長」
「ごめんなさいってば…」

サクラがナルトの頭を鷲掴みにして、謝らさせる。

「大丈夫だよ。僕達はそんなに待たなかったから」

見ているこっちが苦笑してしまうほど、ナルトの声には元気がないのだ。

「よかった。全く、あんたのせいだからね!」
「ごめんってばよ、サクラちゃん」

サクラはいつも通りに振る舞おうと、怒るふりをしていた。

サクラだって、ナルトが何か思い悩んでいる事はわかっている。

何落ち込んでんのよ!!
ナルトらしくない。

空を見上げては、彼方へ思いを馳せる切ない表情。

刹那的な愁いと、無意識に胸元を握る拳が痛々しい。

恋い焦がれる思いを秘めて少年から青年へと成長していくナルト。

そこにはサクラの知らないナルトが存在していた。



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