短い物語
□紫苑
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里の花屋「山中花店」には不釣り合いな少年達が二人。
「どの花か?」と店先で物色中だった。
「ナルト、薄紫の花だよ」
「やっぱり、わかんねーってばよ」
「店の人に聞いた方が早いんじゃない?」
「でも、やっぱ。恥ずかしーってばよ」
腕を組みながら「うーん」と唸るナルト。
傍らで屈むように花を探し続けるサイ。
先程からチラチラ見える人影に、店内から業を煮やした少女が声をかける。
「ナルト、サイさん。何か探してるの?」
「あ!!いの居たのか!?」
「居たわよ。可愛い看板娘が!!」
カウンターから肘をついてナルトに不貞腐れたようにいのは呟く。
「ナルト、いのさんに聞いたら?」
サイはナルトに話しながら、いのに微笑む。
「サイさん、私に出来る事ならお手伝いします!!」
勢いよく立ち上がり、いのは頬を染めてサイを見詰めた。
「あのさぁ、いの。
“紫苑”って花ねぇかな?」
「紫苑?」
「薄紫の一重花ですよ。秋になると咲くって本には載っていました」
ニッコリ微笑みながらサイは答える。
いのは思い出そうと、軽く眼を閉じて顎に手を当てる。
店には無いわね。
でも、どこかに咲いていたような…