それでもキミは好きでいて、

□で
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*留三郎視点*


ナマエが目を覚ましたと聞いたのは委員会で塀の修理をしている時だった。作兵衛が 手が離せない俺に替わり修理に必要な物を取ってきてくる時、保健委員である同学年の数馬に会い、聞いたらしい。


仕事を終わらせ保健室へ向かうと 布団に座っているナマエが視界に入った。確かに起きている。ボーッとしているみたいだ。
ふと此方に気付き目があった。



「‥おう。目が覚めたようで良かった。」


チラリと見ながら 頬をかいた。なんだかじっと見られ過ぎじゃねぇか?


『…ごめんなさい。私、貴方が誰か分からないんです。』





廊下ですれ違った後輩達の泣いていたのはこれだったのか。そう思った。


目が覚めただけでも皆、祭りのように喜んだ。勿論俺もだ。だから急いで仕事を済ませて来たのだ。


「そうか…。」



それだけ言うと部屋から出た。





伊作は 保健室に行ったまま自室には帰らなかった。ここ最近、そうだ。あいつが目を覚ました時から。


俺は 委員会の仕事を黙々と済ませる日々を送っていた。



そんなある日、ナマエが俺の元へ来た。程々なら歩いていいとの許可が下りた少し後、先生から言伝てを預かったのだそう。


ありがたい反面、体の事が心配になった。


「無理はすんなよ?」

俺がそうゆうと、ナマエはフフっと手で口元を隠して笑った



『いえ、大丈夫ですよ。部屋に籠ってて体が鈍ってるのでもう少しブラブラしたいと思ってます。』


「なぁ…」

『はい。』

「…あの時の…………いや、やっぱなんでもねぇや。」

『え?はい。またなんかあったら言ってくださいね。』

「ん。あ、落とし穴には気をつけろよ。」

そう言うと、はい。と返事があった。
ナマエが歩き出したので 俺も作業を再開した。


少しすると、ナマエが息を切らしてやってきた。何かあったのか。

「どうしたんだ!?」

『あの!!か…』

「か?」

『花壇!!ありがとうございました!!』

花壇?‥‥ああ、こいつがまだ目を覚まさない時に作ったやつだ。ナマエは植物が好きだった。花の事となるとホントに詳しく、それほど好きなんだと感じた。

花壇を作るのは以前からの約束だった。花がいっぱいの花壇を作って欲しい。皆が笑顔になれる花壇を!と頼まれた。そんな事覚えているはずもないのに…


『あれを見てたら何故か約束という言葉が頭の中に出てきて…約束、守ってくるたんですね。』


ったく。お前には一生敵わないな。

皆が笑顔になれるなんて言ってたがそんなのお前自体そうなんだから、お前の笑顔を見たいが為にやるに決まってんだろうが。



皆が大好きなナマエの笑顔を。



ひと月ほど前の約束は、






用具委員会総出で作った花壇は少し歪だが、たくさんの花が芽をだしていた。

数月すると 満開の花が溢れんばかりに咲くだろう。

そう想像しながら 倉庫へと向かった。自然と笑顔になる。さて、仕事を片付けるか。




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